
電気自動車(EV)で世界市場を席巻する中国の自動車産業。それに呼応するように、中国のタイヤ産業も急成長が遂げている。24年9月、本紙に掲載の米タイヤ専門誌による「世界のタイヤメーカー売上高ランキング」で中策ゴム(ZCラバー)が第9位と、ここ数年ベスト10内をキープする。米国のトランプ関税が北米をはじめ、世界のタイヤ市場にどのような影響をおよぼすか、行方が注目されるところ。そのようななか、中国メーカー各社は中国外で工場を新設し生産拡大路線を強く推し進めている。
前記のランキングでは、中国最大のZCラバー以外に、賽輪集団(サイルングループ)、玲瓏輪胎(リンロングループ)が上位20位圏内に入りランクアップを着実に果たす。また、三角輪胎(トライアングルタイヤ)、ダブルコイン、Prinx、貴州タイヤ、森麒麟輪胎(青島センチュリー・タイヤ)が上位30位に名を連ねた。
中国製EVの需要は底堅く、欧米市場での販売は成長するものとみられる。それに歩調を合わせ、中国メーカーのタイヤは特に低価格帯の分野を中心に市場シェアを獲得。EV用タイヤの需要拡大を見越し、さらなる生産能力の拡大を図っている。
たとえばリンロングループは先に、セルビア国内の生産拠点に6億4500万ドルの増産投資を行うことを明らかにした。2030年末までに完成を予定し、主に欧州市場のタイヤ需要に対応するという。
また、サイルングループは5月29日、メキシコに建設していたタイヤ工場が稼働を開始したことを明らかにした。この新工場への投資額は2億4000万ドル。工場の生産能力は半鋼ラジアルタイヤ(カーカスの素材がスチール製とポリエステル製の複合構造)年産600万本、オールスチールラジアルタイヤ年産165万本を予定。
サイルングループは5月28日にも、インドネシアに建設していた乗用車用ラジアルタイヤ工場の稼働開始を発表したばかり。これは同社にとって東南アジアで4番目のタイヤ生産拠点。生産能力はラジアルタイヤ年産360万本。
この2社以外にも中国メーカーは大手・中堅20社ほどが相次いで大規模な増産計画を表明している。
低価格帯の分野で勢力分布を拡げる中国メーカー。海外市場への進出はさらに加速するばかりだ。一方で、米国政府の関税政策により、主要ターゲットである北米市場向けの製品が大量に行き場を失う可能性がある。その影響を含め、中国製品のグローバル市場での動向が注目される。