〜話題のその後〜保険不正請求、「人頼み」にリスクあり  システムも組み合わせて「不正ゼロ」へ  ゼアーウィンスリーサービス株式会社 一戸翼社長に聞く

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カテゴリー: ニュース
「事故申請」から「調査・分析」を経て「承認(または不承認)」にいたるまでの時系列フロー
「事故申請」から「調査・分析」を経て「承認(または不承認)」にいたるまでの時系列フロー

 2023年に起きた自動車保険の不正請求事件。大手中古自動車販売会社での発覚を皮切りに、業界全体を取り巻く問題へと発展し、いまだにその余波がぬぐいきれていない。信頼回復と透明性向上には何が必要か。保証サービスを展開するゼアーウィンスリーサービス株式会社の一戸翼社長に聞いた。

 

 不正請求事件。保証への影響は

 

 ―不正請求事件後の保証に対する影響はどうか。

 

 当社では法人向けに保証サービスを展開しているが、不正請求事件後に契約者である事業者本社からいただいた声は「店頭スタッフによる不正」を懸念する声だった。

 各契約会社では不正撲滅の徹底に取り組んでいただいているものの、拠点数・スタッフ数の多さから全体に浸透しきれていない部分がある。そのため、現場レベルでの誤認や「カスタマーファースト」に対する本社と現場の解釈違いが、「不正請求につながるリスク」として認識されている。

 当社でも23年2月に外部の専門人材も招へいしてリスクマネジメント委員会を新設して、査定オペレーションやリスク管理体制の再構築を進めた。査定体制のなかで、写真の提出要件の追加や現物調査の導入など精緻化した。生成AIによる画像解析技術も開発中で、これらの取り組みでヒューマンエラーの低減を目指している。

 

 タイヤパンク調査センター設立の背景に

 

 ―24年4月に「タイヤパンク調査センター」を設立された。

 

 

ことし2月開催「第22回国際オートアフターマーケットEXPO2025」に出展の同社ブース
ことし2月開催「第22回国際オートアフターマーケットEXPO2025」に出展の同社ブース

信頼回復と透明性向上に向けた取り組みとして、あいおいニッセイ同和自動車研究所との連携で設立した。センターでは高度な査定スキームの確立とデータ蓄積に努めている。これにより健全で信頼される保証運営体制を確立している。

 タイヤパンク調査センターの設立背景には22年の保険金不正請求事件の報道以降、消費者の信頼が大きく揺らいだことだ。当社が提供するタイヤパンク保証では、安心・信頼の提供が最重要であり、不正排除と適正査定はその根幹をなす。

 

 センターでは画像解析だけでなく現物タイヤを対象とした実地調査を行い、不正の疑いのある事案があれば徹底した分析を行っている。独自のスコアリングによる疑義判定の試験運用を始めており、今後はこの技術を査定システムへ実装する予定だ。

 当社が「タイヤパンク保証サービス」を開始した16年以降、着実に査定精度は上がってきた。さらに「タイヤパンク調査センター」立ち上げなど直近1年の取り組みで査定チームの目は確実に養われ、精度向上に直結している。これらが功を奏して、ユーザー・販売店双方に安心を提供するサービス体制に進化したと自負している。

 

 信頼回復に全力。保証の健全化を

 

 ―顧客となっている事業者の反応はどうか。

 

 当初は現場から「査定工数が増えた」といった戸惑いの声もあったが、意義と目的を粘り強く伝えてきた。現在では「ゼアーウィンスリーサービス社に任せれば安心」という声を多くいただいている。契約件数についても順調に増加している。査定プロセスを強化したことで、エンドユーザーからの信頼にもつながっていると感じる。

 

 ―業界全体の信頼回復にどのように寄与していくか。

 

 不正請求の事例やタイヤの適正使用に関する情報発信・啓発活動は広く展開していく。損保会社や販売店代表者様への情報提供も積極的に行い共通理解の醸成に努めていくとともに、保証業界の健全化に向けた将来的な取り組みにも賛同する。当社もこれまでの知見を生かし、その設計・運営に深く関与していきたい。

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