「本数より中身の商売」内海タイヤ工業所

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カテゴリー: ディーラー, レポート

 有限会社内海タイヤ工業所は、品川区東中延の国道1号線沿いに店を構える。店頭には新品のタイヤだけでなく、信頼の厚い顧客からの委託品である高級中古タイヤも並んでいる。今年創業69周年となる同社は1948年、戦後すぐに内海正裕社長の父が開業した。店内には以前入庫したビンテージカーの写真もあり、土地柄輸入車も多いという。

イレギュラーにも対応する熟練の技術

常連客に説明をする内海社長
常連客に説明をする内海社長(右)

 折しも取材中、一台の車両がタイヤ交換に訪れていた。車種はフォードのエクスプローラー。2年前に購入し、初の車検を前にタイヤ交換をしたいということだった。勤務先の社長が同店を利用しているため、勧められての来店という。

 早速タイヤの状態を調べると、空気圧は0。オーナーは内海さんに「購入以来一度も空気充てんをしたことがなかった」と話した。その理由は、特殊なホイールとオーナーの知識不足にあった。

 持ち込まれた車両は扁平率の低い22インチタイヤを装着しており、更にデザインを重視した形状のホイールのため、ガソリンスタンドでは「空気充てんはできないと断られた」のだという。また、タイヤには適正な空気圧が必要であり、走行中に次第に空気が抜けていくということを知らなかった。結果として空気圧が0のまま2年間で5000kmを走り続けたタイヤは、サイドウォールが割れてトレッドも摩耗していた。

 内海さんは「バルブの形が特殊なものは、合致する特殊ツールがないガソリンスタンドでは空気充てんが難しい」と話す。その点、様々な形状に対応できるタイヤ専業店は、今回の車両のような一般的ではないホイールでも整備できる強みがある。そのため、他では空気充てんや整備ができないからと訪れる顧客もいるという。

 今回、交換用のタイヤはオーナーがネットショップで購入したアジアタイヤの一つHAIDA製だ。予算重視でインターネットを探し、通信販売で購入したそうだ。

 デザイン性の高いホイールはタイヤの組み付けが難しい事があり、このホイールもビードをはめ込むと反対側が抜けてはずれるという「はじめてのケース」と内海さんが言うトラブルがあったものの、手際よく4輪をすべて交換。帰り際オーナーに、「あまり走らなくても2、3ヶ月後に空気圧の点検に来たほうが良い」と説明していた。

顧客の予算と希望本位のスタイル

内海タイヤ工業所
内海タイヤ工業所

 今回のようなオンラインで購入したタイヤの持ち込みや、格安のタイヤを希望する顧客も一定数はいるという。それに対して内海さんは「あくまでもお客さまの予算と希望次第。求められたものに応じるのがうちの仕事」だと、顧客の希望に沿う顧客本位の姿勢を貫く。とはいえおもねるわけではなく、あくまでも自然に顧客の求める情報や技術を、経験の引き出しから出していく。

 「いろんなお客さまがいる。百貨店で眺めてフェイストゥフェイスで選ぶような買い方をする人もいれば、ネットで調べてなんでもいいという人もいる」どんな事情や希望があっても、顧客が求めるのであればそれに応じていく。

 さまざまな拡販の方法や流通の変化についても「最終的にはお客さまが店を選ぶ。選ばれたらするべきことをする」という内海さんの元には、「タイヤの相談に来て、任せるよと言ってくれる」常連の顧客が訪れる。ちょうどエクスプローラーが入庫する前には、個人で複数台の外車を所有するオーナーが交換タイヤの相談に訪れていた。このような顧客は皆、既存の顧客の紹介だという。

内海社長
内海正裕社長

 「お客さまが、ここがいいよという紹介をしてくれるのが、一番良い客筋を掴める。そのためにやはり大切なのは、人と人で顔を合わせて得る信頼。信頼が紹介に繋がる」と話す内海さんは、「やはりタイヤは売れれば儲かり面白みがある。ただ今は昔と違ってインターネット販売もあって競争が激しいため、販売価格が全体的に下がっている。昔ほどの利益を出すのが難しい」と言う。

 「だが単純に利益を求めて本数を売るということは、結局は値段競争に走ってしまい、仁義なき戦いになってしまう」という内海さん。「本数や価格ではなく、中身を取る」商売で、今後も顧客の要望に答え、信頼を勝ち取っていく。


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