=ニュースの現場から=  冬のはめ換えシーズンを迎えたタイヤ販売店

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カテゴリー: レポート, 現地

 タイヤセレクト松戸

 地域に密着し安全で高品質の作業実践

 11月中旬、列島は寒気に覆われ気温が急激に下がった。屈指の豪雪地帯である青森・酸ヶ湯では1日で40センチ以上もの雪が積もった。札幌など降雪地域であっても夏タイヤのまま走行し、事故や交通トラブルを引き起こしたケースがみられた。猛暑がいつまでも続いたせいで油断し、冬用タイヤへの交換が間に合わなかったのかもしれない。そんな折、タイヤ交換の本格シーズンを迎えたタイヤ販売店を訪ねた。

 

 50万人都市の足元を支える専門店

 

タイヤセレクト松戸=写真1=
タイヤセレクト松戸=写真1=

 タイヤセレクト松戸=写真1=を訪ねたのはウィークデーの開店と同時。フリーに来店するドライバーが比較的少ないタイミングを見計らったつもりだ。だがその読みは外れた。この日はタイヤ交換の予約が複数件入っており、開店直後であっても予約外の飛び込み客が来店し引きも切らない様相をみせた。

 

 タイヤセレクト松戸はダンロップタイヤ首都圏カンパニーの直営店だ。住所は千葉県松戸市日暮7-14。松戸は江戸川を渡ると東京という〈千葉都民〉のベッドタウンで、人口50万人都市。日暮(ひぐらし)の町はJR武蔵野線と新京成電鉄が乗り入れるターミナル、新八柱駅/八柱駅に近い住宅地。店は県道281号線と交差する県道51号線のロードサイドショップだ。

 町の中心にある都営の大規模霊園はつとに有名なところ。エリアには昭和の高度経済成長を支えるために築かれたマンモス団地が今も姿をとどめる。都市開発の流れに沿ってこの地は住宅街として拓かれ、さまざまな商業が発展し続けてきた。

 一方で矢切ねぎに代表されるように農業や、中小の工業も古くからさかん。工業団地や物流団地にも近い。そこを商圏とすることから、タイヤセレクト松戸が取り扱うクルマやタイヤのジャンル、種類・サイズレンジはかなり広い。地域密着店としてオールラウンドのタイヤサービスが求められる。

 

 好調スタートを切ったシンクロウェザー

 

「シンクロウェザー」=写真2=
「シンクロウェザー」=写真2=

 冬商戦のシーズンなので、来店客はスタッドレスタイヤへのはめ換えのためと思われた。しかしこの日、開店トップから3番手までの予約全員が「シンクロウェザー」=写真2=への交換だった。

 「シンクロウェザー」はダンロップのオールシーズンタイヤで、この10月から発売されたばかり。大谷翔平選手をイメージキャラクターとして起用したことで話題性は発表当時からとびきり高い。大谷選手はつい先日もMLBで2年連続3回目のMVPを受賞し、そのスター度合いに磨きがかかる一方だ。

 飛田正人(ひだ まさと)店長=写真3=に「シンクロウェザー」の販売状況を聞くと「好調なスタートを切った」、そう笑みをたたえる。当初の販売想定数に対し、すでに2.5倍もの予約を受け付けたという。この日も「シンクロウェザー」への交換作業が続いた。20年ほどのキャリアで、これほどの〈指名買い〉は経験がないそうだ。

飛田正人(ひだ まさと)店長=写真3=
飛田正人(ひだ まさと)店長=写真3=

 どのようなクルマがどのタイヤからチェンジしたのか、ピットでその様子を眺めた。リフトにのぼったクルマは人気のSUV、高級ミニバン、スモールSUV。もともとの装着タイヤはいずれもコンフォートタイヤ、または低燃費タイヤだった。

 現在の装着タイヤがすり減ったための夏タイヤとしての交換なのか。冬季に備えスタッドレスタイヤの代わりにそれを選んだのか。見学ではそこまでわからない。ただ飛田店長は「『シンクロウェザー』に採用された『アクティブトレッド』技術の高さや商品力が、試乗会を通じメディアから高い評価を受けユーザーの皆さまの心をつかんだのは確か」と、好調の要因を分析する。

 

 作業標準を遵守。安全と作業品質向上

 

整備機器が機能的に配置されている=写真4=
整備機器が機能的に配置されている=写真4=

 タイヤセレクト松戸は5人体制。この日もスタッフ総出で、接客とピット作業にあたっていた。タイヤチェンジャー2台、自動エアー充てん機能付きのセーフティケージ(安全囲い)やホイールバランサー、アライメントテスターなどの整備機器が機能的に配置されている=写真4=。

 タイヤ空気充てん作業の際にセーフティケージを使用することは、今でこそ標準の作業手順とされる。だが過去には所有していても使われないケースがみられた。同店は早い段階からそれを導入し、作業動線のなかへ組み込んだ。チェンジャーでタイヤ脱着→ケージで自動エアー充てん→バランサーでウェイト貼り付け、という一連の作業を効率的で確実に行うことができるピットレイアウトとした。安全作業への取り組みを徹底し、作業品質を高めた。

 飛田店長は「自動でエアーを充てんしている間にスタッフは別の工程を作業できる。ケージに入れる手間を惜しむよりも、結果として作業時間は短縮でき、安全性は確実に向上した」と話す。

 

 顧客ファーストを社員一丸で実践

 

 いい場面を見た。タイヤ交換が終わるのを待つ女性客が退屈しのぎか、店内にディスプレイされた大谷選手の等身大パネルとの2ショットを自撮りしようとしていた。そのときにフロント担当の女性スタッフが「お撮りしましょうか」とさりげなく声をかけたのだ。

 周囲を見わたす視野の広さ。ゲストへの気配り。マニュアルにないからと、仕事の範ちゅうを自らがせばめる接客対応に昨今、多く遭遇する。しかし、顧客ファーストは店のスタッフ全員が同じベクトルを持ち実践してこそ果たされるはずだ。タイヤセレクト松戸のそれへの取り組み姿勢はこのワンシーンに凝縮されている。

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