整備作業の安心を“見える化”KTCのタイヤ点検自動入力システム

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カテゴリー: レポート, 整備機器

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、特に輸送業界を中心に車両管理・メンテナンスにかかる時間と人員をどのように削減するかが喫緊の課題。そこで今、注目を集めているのが車両管理のフリートマネジメントサービスだ。海外では車両管理に関する業務すべてを一元化し、そのアウトソーシングを請け負う専門企業が急成長しているという。一方で、その規模まではいかなくても、車両管理業務の簡素化を図るシステムが次々に開発され、各事業所で導入が進みつつある。その多くはパソコンと検査機器をオンライン接続するものだ。点検記録の手間を省き時短を図り、業務全体を“見える化”し一気通貫で管理する。京都機械工具(KTC、京都府)がこのほど開発し販売展開している「TRASAS」(トレサス)シリーズもその一つ。開発担当者に詳しい話を聞いた。

太田省三リーダー(左)と山口佳之氏
太田省三リーダー(左)と山口佳之氏

 TRASASプロジェクトリーダーの太田省三氏と、T&M推進本部TRASAS販売推進部主事の山口佳之氏。両氏によると、「TRASAS」シリーズと整備記録アプリの「e―整備」はタイヤ販売店をはじめ、大手カー用品店やカーディーラー等で採用され好評を博しているという。

 タイヤ取扱い事業者が現場で行う整備作業のうち「タイヤ溝を測定する」「ホイールナットを締結する」「ブレーキパッドの残量を測る」――これら3つの専用機器をデジタル対応させ、PCで一元管理する。それがKTCの「タイヤ取扱い事業者向けTRASAS for AUTO」だ。更に「e―整備」はタイヤデプスゲージ、トルクレンチ、ブレーキパッドゲージそれぞれをオンラインで繋ぎ、点検記録を自動入力するというシステム。

「TRASAS for AUTO」を構成する工具一式。(上から)デジタル変換ソケット「トルクル」を装着したトルクレンチ、「タイヤデプスゲージ」、「ブレーキパッドゲージ」
「TRASAS for AUTO」を構成する工具一式。(上から)デジタル変換ソケット「トルクル」を装着したトルクレンチ、「タイヤデプスゲージ」、「ブレーキパッドゲージ」

 太田リーダーは、「お客様から『測定に時間がかかってしまう』『測定値が読みにくく、読み間違いすることもある』『作業者により測定方法などが一貫しておらず、勘やコツに頼るので、担当が代わると数値にバラつきが出たり整合性のない結果が示される』『点検を記録するために二人がかりにならなければならない』――このような声が上がっていました」とタイヤ整備現場の状況を詳述する。

 これらの課題を解決すべく開発したのが「タイヤ取扱い事業者向けTRASAS for AUTO」と「e―整備」であり、「TRASAS」シリーズの各種専用機器だ。

「タイヤデプスゲージ」で残溝を測定。得られたデータがタブレット端末に表示される
「タイヤデプスゲージ」で残溝を測定。得られたデータがタブレット端末に表示される

 「タイヤデプスゲージGNDA020」はトレッド溝にゲージを押し当てるだけの簡単操作だ。測定時間が非常に短い。バックライト付きなので暗い場所での測定も容易だ。しかもコンパクトサイズなのでゲージがフェンダーに当たらずタイヤハウス内で測定できる。

 得られたデータは「e―整備」のアプリを通じiPadへと転送され、自動入力される。「タイヤのポジションごとに残溝が表示されるので、商談に向けた提案資料を容易に作成することが可能」だと山口主事は説明する。

 トルクレンチには「トルクル 差込角6.3sq:GNA010―02/同9.5sq:GNA080―03/同12.7sq:GNA200―04」というデジタル変換ソケットを使用する。差込角が同じハンドルに装着するだけで、手持ちの機械式トルクレンチがデジタルトルクレンチに早替わりするものだ。

 そのレンチのハンドル部分にスマホ(iPhone)を取り付ける。トルクレンチ作業を行うと、「トルクル」のデータをiPhoneが取り込む。トルク値が正常であれば、iPhone画面上のグリーンのゾーンに表示され、記録が保存される。だがオーバートルクの場合はそれがレッドゾーンに、逆に不足している場合はイエローゾーンに表示され、記録として保存されない。再度作業しなければ記録されないため、適切なトルク値での作業を促すとともに、締め忘れなど“ポカヨケ”に繋がるというのも特徴だ。

デジタルトルクレンチにスマホをセットするだけ
デジタルトルクレンチにスマホをセットするだけ

 「ブレーキパッドゲージ GNNA025」も押し当てるだけで簡単に測定が可能。バックライト付きで、しかもブレーキパッドを外さず点検口から測定することもできる。これもデータはiPadへ転送され、自動入力される。

 「タイヤ溝やトルクレンチの作業記録を残すというのは、作業ミスのリスクを低減し、お客様から信用を得ることに直結します。また整備作業の安全・安心を見える化することで、作業品質の標準化を実現します。『e―整備』による測定記録はそのまま印刷できますので、データを広く共有することも可能となります」、そう太田リーダーは解説する。

 なお「TRASAS」シリーズには、タイヤ取扱い事業者向け以外にも、自動車整備など各種の業態に対応するシステム構成を用意しているという。

 タイヤ整備の現場ニーズにミートした新システムとして注目が集まる。


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