ミシュラン 輸送業界にハード・ソフト両面からソリューション提案

 日本ミシュランタイヤは9月20日、新潟県糸魚川市内で「2019年アドバンスユーザーミーティング」を開催し、全国の運送会社から約60人が参加した。当日は、ミシュランのリトレッドタイヤを製造するトーヨーリトレッドを見学したほか、ドライバーの定着に向けたサービス提案をはじめとするセミナーを実施。運送業界の多様な課題に応えたソリューションをアピールした。

日本ミシュランタイヤの高橋常務
日本ミシュランタイヤの高橋常務

 運送業界の経営環境は、慢性的なドライバー不足や労務管理の厳格化といった要因により厳しさを増している。そうした中、B2Bタイヤ事業部の高橋敬明常務執行役員は、「私どもが提案している3Rや『X One』(エックス・ワン)などを活用し、オペレーションの改善につなげることができるのではないか」と意気込む。

 ミシュランの3Rは、長寿命の製品を活用してタイヤ経費の削減を図る“Reduce”(リデュース)、リグルーブの“Reuse”(リユース)、リトレッドの“Recycle”(リサイクル)からなる。

ミシュランのトラック・バス用タイヤ
ミシュランのトラック・バス用タイヤ

 同社では、タイヤ寿命を最大25%伸長するリグルーブと、ケーシングを再利用するリトレッドによって、トータルで1km走行あたりのコストを新品タイヤに比べて約21%削減できるとシミュレーションする。

 ミシュランが提供する価値はコスト面だけにとどまらない。同社では、“最後まで持続する高い安全性能”を目指し、最新技術を駆使したトレッドパターンの開発を推進している。特にウェット性能の試験は、新品タイヤ以上に、摩耗したタイヤに対して時間を費やして行っているという。

日本ミシュランタイヤの田中氏
日本ミシュランタイヤの田中氏

 性能を持続させることがどれほど重要なのか――B2Bタイヤ事業部マーケティング部の田中禎浩氏は「はじめの2~3万kmで良い性能を発揮しても、そこからパフォーマンスの劣化が進んでしまえば、ドライバーはほとんどの期間を劣化したタイヤに命を預けることになる」と指摘する。

 さらに、稼働時間の最大化や省力化に寄与する“生産性”も、運送業界にとって重要な要素だ。田中氏は「ローテーションやタイヤ交換、故障は大きなロスタイムとなる。それらをいかに防ぐかがタイヤにできる生産性の向上だ」と述べ、メンテナンスを半減できるトラック・バス用ワイドシングルタイヤ「X One」といった同社製品のメリットを訴求した。

左がリグルーブしたタイヤ
左がリグルーブしたタイヤ

 ミシュラン製品が、 “コスト削減”“安全性”“生産性”へのソリューションとして展開される一方、同社では、運送業界が直面するドライバーの離職や新規採用、人手不足型倒産などの経営課題に向けて、サービスによるソリューション「運送事業者向け診断パッケージ」も提供している。

 これは、所属ドライバーの意識や業界平均とのギャップ、ドライバー定着のために優先して取り組むべき項目の把握に役立つもの。給料やワークライフバランス、業務の安全性、職場の清潔さなど多岐に渡る項目で社員アンケートを実施し数値化できるほか、同サービスを継続して採用した場合には前回結果との比較も可能だ。

 田中氏は「社員満足や、やりがい、帰属意識が顧客サービス、顧客満足につながる。その成果物として収益が生まれる」とし、会社の現況を把握する重要性を訴えた。

 ハードとソフトの両面で、運送業界が抱える課題にソリューションを提案する日本ミシュランタイヤ――業界の持続的な成長に向けて、タイヤメーカーからどのようなアイデアが発信されるのか、今後も注目したい。

高品質なリトレッド生産を推進するトーヨーリトレッド

トーヨーリトレッドの工場
トーヨーリトレッドの工場

 高瀬商会の関連会社であるトーヨーリトレッドは、日本で主流のリモールド方式と、日本ミシュランタイヤのリトレッドにも活用するプレキュア方式を導入している。

 生産プロセスの第一段階はケーシングのチェックだ。高瀬商会の高瀬吉洋社長が「リトレッドは『検査に始まり検査に終わる』と言っても過言ではないほど検査が非常に大事となる」と話すように、同社では目視のほかに、シアログラフィー検査も取り入れている。この検査では、肉眼で発見しにくいタイヤ内部の故障箇所を特定できる。また、来年にはカメラの解像度を上げることで更なる精度向上を目指す計画だ。

高瀬商会の高瀬社長
高瀬商会の高瀬社長

 その後、コンピューターで管理した全自動バフマシンなどを活用し、最適な形状となるようトレッド面の古いゴムを削る。

 リモールド式では、オービートレッド成型機でトレッドゴムをケーシングに巻き付けてから約160度で加硫するが、プレキュア式はシート状の生ゴムと加硫済みのトレッドゴムを張り付け、約120度で加硫する。温度の違いから前者の方式をホット、後者をコールドと呼ぶこともある。

 加硫後には、両方式とも高圧試験機によるテストなど最終検査を実施。塗料の吹き付けといった仕上げの工程を経て、リトレッドタイヤは出荷される。

 製造時、一本あたりに必要な資源量は新品タイヤのおよそ3分の1で、二酸化炭素排出量は約4割に抑えられるリトレッドタイヤ――持続可能な社会の実現に向けた選択肢として、更なる普及に期待がかかる。


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