ミシュラン 日本初のWEB管理システム「e-Retread」稼働から1年

「3R」推進の武器に

シノハラタイヤの篠原社長
シノハラタイヤの篠原社長

 実際に「イーリトレッド」を導入した販売店ではどのような効果が得られているのか――シノハラタイヤ株式会社(東京都江東区)の篠原大社長は、「ミシュランタイヤを安定的に販売していくためにはミシュランが推奨している3Rは不可欠。3Rを推進していく上でこのシステムは大きなプラスになっている」と話す。

 同社はミシュランのトラック・バス用タイヤを数多く販売し、以前からリトレッドにも積極的に取り組んできた。「イーリトレッド」により回収から生産、出荷までのリードタイムが短縮されるわけではないが、「パソコン上で台タイヤの状況が確認できるようになったことで安心感が明確に違う」――3Rは国内市場の将来を考えた際、販売店にとって欠かせないソリューションとなりうるが、完遂するには非常に手間がかかるのも事実。だが、「3Rをしっかりと取り組んでいく時に避けられない、その悩みを解決してくれた」

 またNG判定についても「理由が明確化されることは大きな意味を持つ。NG理由が増えたり細かくなったのではなく、明快になった」と、そのメリットを感じている。

 ケーシングは販売店として「OK」と判断したものでも、工場サイドの検品では「NG」と判定されるケースもある。ただ、これまでは同じデータを見る機会がなかったため、認識に多少のギャップがあった。今後はお互いがデータを共有していくことで、有効性は高まっていく。

 篠原社長は「今後、専業店が生き残っていくためには、リトレッドなり3Rなりユーザーへその価値を伝えていくことが大切だ」と話す。そのための“ツール”として「イーリトレッド」は武器となっていきそうだ。

得られた情報を将来の製品に活かす

日本ミシュランタイヤの石井マネージャー
日本ミシュランタイヤの石井マネージャー

 ミシュランにとっても活用法は可能性が広がる。「イーリトレッド」には委託以外の台タイヤの情報も含まれており、リトレッド工場では委託、台交換、台付きを問わず1本残さずシステムに登録している。つまりミシュランとしてはケーシングのデータを100%把握できることになる。

 石井マネージャーは「製品やサイズによって表れた傾向をデータとして数値化し、技術部と共有して今後の商品開発につなげていきたい」と話す。

 また同社が全国のタイヤ販売店と共同で取り組んでいる「パートナーシッププログラム」との連係もより深まっていくことが期待される。

 「ケーシングの判定基準や正しいタイヤの組み換えといったスキル向上のための教育プログラムを提供していく。そうすることでより丁寧にタイヤを扱って頂け、タイヤの価値をフルに活かして頂ける」――ライバルメーカーが新品、リトレッド、サービスをひとつのパッケージとして提案するのに対し、ミシュランはデジタルサービスを要にユーザーの囲い込みに繋げていく。

 今後は販売店の意見を参考に、より使いやすいフォーマットへ工夫したり、システムそのものの使用方法もユーザーフレンドリーな内容に改善を加えていく計画だ。さらにミシュランとしては、「イーリトレッド」から得られた情報をベースに、3Rの必要性をより明確に打ち出していく方針だ。なお国内で一定の成果が得られれば、将来的にはアジアなど他国にも展開していくための検討を始めたところだ。

ミシュランのリトレッド生産現場から

トーヨーリトレッドの工場
トーヨーリトレッドの工場

 日本ミシュランタイヤがリトレッドタイヤの生産を委託している髙瀬商会の関連会社、トーヨーリトレッド。同社では「イーリトレッド」のテスト段階から協力をしてきたが、後藤高根社長は「このシステムが入ることで変えなければならないことは少なくなかった」と振り返る。

 「イーリトレッド」の導入により作業プロセスの大幅な変更が求められたが、メーカーと工場がコストと生産性の確保を両立させるために互いに知恵を出しあうことでシステムが完成した。

 従来、工場では生産量や不能率、不能理由について紙に記入するなどマニュアルに頼る作業が多くあり、NGになった場合も1本ごとに不能判定書をチェックしていた。だが、「今は全てシステムで運用できる。不能理由がコード化され共有しているので、やりとりの時間は少なくなった」

 髙瀬商会の髙瀬吉洋社長は、「日本では、これまで更生タイヤの履歴管理がさほど要求されていなかったが、最近は品質や保証といった問題がクローズアップされてきている。例えば順調に流れているときには何も振り返ることもないが、何らかの改善項目が見つかった時に、すぐに追跡することが可能となる。今はデータを蓄積している段階だが、何年か続けていくと、このタイヤはこういう傾向があるなどと有効な活用方法に繋がっていく」と将来への展望を示した。

 また後藤社長は、今後の可能性について次のように話す。「これから予想しているのは例えば不能があり、それが製造上にかかわることだった場合、工場とミシュランの技術部門でこういうふうに作り方を変えるなどといった共通のデータになる。あるいは一定のユーザーにのみ、あるトレンドが出た場合、ミシュランが使い方をアドバイスできる。作り手と売る側が共通の認識で対策を練ることができ、それが製品力にも影響してくるのではないだろうか。今後、お互いに踏み込んでくれば、そういう方向に向かっていくかもしれない」

 髙瀬社長は、「イーリトレッド」はミシュランの“大きなチャレンジ”だと表現し、「これから蓄積するデータの分母が増えれば増えるほど傾向を掴みやすなっていく」と期待感を示す。

 「生産ラインでは今後どういう効果が出てくるか――お互いに同じデータを蓄積することで可能性が広がっていく。製造原価そのものが下がるわけではないが、将来的には品質管理上、必要になってくるだろう。それを先んじてやっていく」

 ミシュランが国内市場に導入したデジタルソリューションが市場に与えるインパクトは現時点では未知数だといえる。だが数年先、大量のデータが積み上げられ、有効な分析が行われた時、ユーザーにとってより価値がある展開が生まれてくるかもしれない。


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