ミシュラン 日本初のWEB管理システム「e-Retread」稼働から1年

台タイヤの情報を“可視化”する

 デジタルソリューションを急速に加速させている日本ミシュランタイヤ。市販用タイヤでインターネットによる受発注システムやメーカーが直接行う通販サイトの運営、販売店向けのタブレット端末の活用促進など他社に先駆けた取り組みを通じて、業務の効率化や新たなビジネスモデルの構築を進めている。さらにトラック・バス用タイヤ事業においては2014年にリトレッドタイヤビジネスにデジタルソリューションを導入。同年12月から運用をスタートさせたのが「e-Retread」(イーリトレッド)システムとなる。本格稼働から1年が経過し、タイヤ販売店や生産工場ではどのような効果が生まれてきたのか、またミシュランはどのような将来像を描いているのか――それぞれの取り組みを追った。

グループ初のWEB管理システムを日本市場に導入

 ミシュランが「3R」をはじめとしたリトレッド事業を積極化することの背景には、大きく分けて運送業界のコストを低減すること、地球温暖化を低減させること――この2点がある。運送会社やバス会社といったユーザーからタイヤを預かり再生加工する委託リトレッドの場合、新品タイヤの約6割のコストでほぼ同等の性能が得られるため、タイヤの経費低減へ大きく寄与する。またリトレッドは新品タイヤと比べて省資源・省エネルギーで生産ができるというメリットもある。

委託イーリトレッドシステムの流れ
委託イーリトレッドシステムの流れ

 近年、業界全体でリトレッドの構成比が高まる中、日本ミシュランタイヤが2014年12月に運用を開始した「イーリトレッド」は、台タイヤの回収から工場における生産工程、出荷までリトレッドに関連するさまざまなデータをタイヤ販売店、メーカー、工場の3者で共有するシステム。他社でも工場内の生産管理システムとして似たような仕組みは採用されているが、ケーシングをデータ化し、販売店をも巻き込んだ形で一元的に管理するシステムは日本で初めてとなる。

 そもそも国内のリトレッドタイヤには委託、台付き、台交換と3つの商流があり、プロセスも複雑。「預けた台タイヤが今、どの工程に進んでいるのか」「リトレッドされた製品はいつ出荷されるのか」――こうしたやり取りが電話やメールで日々行われており、確認まで時間を要するケースも少なくなかった。また場合によっては顧客の資産である台タイヤが“行方不明”になってしまうこともあった。

 一方、「イーリトレッド」はこれまで人的リソースに頼っていた管理業務をデジタル化し、またシステム化による業務の標準化により均一なサービス、付加価値のある情報提供へと繋げていくことを目的としている。インターネットに接続可能な環境であれば、パソコンやタブレットなどさまざまな機器でリアルタイムに情報を確認できる。とくに台タイヤがどういう状況になっているのかを即座に確認することが可能な点は、取り扱う本数が多ければ多いほど業務の大幅な効率化に寄与する。

ミシュランのリトレッドタイヤ
ミシュランのリトレッドタイヤ

 日本ミシュランタイヤトラック/バスタイヤ事業部リトレッドマーケティングマネージャーのの石井ミオ氏は、「委託リトレッドは量・質ともに高いレベルが要求される。リトレッドの需要が高まってきている中、サービスのレベルを高めていくためにどうしてもこのシステムが必要だった」と話す。

 同社では2012年からシステムの構想を始め、2014年初頭に正式にプロジェクトを発足。その後数カ月にわたりタイヤ販売店やリトレッドタイヤの生産委託先である髙瀬商会(新潟県糸魚川市)の協力を得てテストを繰り返した。

 運用開始から1年が経過した2015年12月時点で、ミシュランタイヤを一定数以上取り扱っており、その中で委託を主としている販売店への導入率は当初の4割から7割まで拡大している。

リトレッドの「NG理由」がカギ

e-Retreadシステムへ情報を入力
e-Retreadシステムへ情報を入力

 「イーリトレッド」の作業フローは、販売店がセリアルやリトレッドパターン、回収日などケーシング情報を登録するところから始まる。この情報をもとに、髙瀬商会では生産開始と生産完了、検査結果を入力。さらにミシュランのカスタマーサービスが出荷予定日や出荷先といった情報を更新していくのがおおまかな流れ。

 生産履歴など各種情報は絶えずアップデートされサーバーに蓄積されていく。システム導入以前は情報にバラつきがあったが、「イーリトレッド」ではケーシング1本ごとに管理するため、出荷や製造に関するあらゆる情報が“可視化”される。これが1つめの特徴となる。

 ただ、このシステムにはより重要な項目が含まれている。それはリトレッドの“不能理由”だ。

 「預かったケーシングがどうしてNGになるのかが重要。それはユーザーの日常的な使い方に問題があるからなのか?空気圧管理は適正なのか?ローテーションは最適なタイミングで行われているのか?など、NG理由やNG率からタイヤがどのように使用されているのかを推測することができる」(石井マネージャー)。

 ユーザーごとに特定の傾向が示されれば、販売店にとっては顧客に対して適正なタイヤ使用方法をアドバイスするなど活用方法が広がっていく。

 以前は工場で「リトレッド不能」と判定された場合、それだけで済まされていたが、「イーリトレッド」ではそれらの情報がレポートとしてフィードバックされる仕組みとなっている。

 「そのレポートを元に分析をして、ユーザーに対して提案活動を行える。見た目では分からないセパレーションや釘穴など、理由を明確にすることで『想定される理由は過荷重です』『ローテーションがロングスパンでした』と説明できるようになる。『それを改善するために、こういうことをやりましょう』と、提案に繋がっていく」

 こうした営業活動は販売店にとって強みとなるだけではなく、ユーザー自身のタイヤの使い方が改善されることで将来的にはNG率そのものが減少していくことも期待される。それは最終的にタイヤコスト削減、環境負荷低減に繋がっていく。


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