廃タイヤ中間処理の現場から

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カテゴリー: レポート, 現地

 株式会社イトウ(千葉県千葉市中央区、伊藤嘉靖社長)は、千葉港にほど近く、JFEスチールをはじめとする京葉工業地帯の一画にある。クルマなら京葉道路、館山自動車道の蘇我ICから10分程度。鉄道を使う場合はJR内房線・浜野駅から1キロ圏内と、交通の便に優れる。同社のオフィスを訪ね、伊藤社長、高林重嗣顧問、小松敏子総務課長から廃タイヤの中間処理業の昨今の状況を聞いた。

高品質なチップ製品の安定供給図る

イトウの写真
右から2人目が伊藤社長、左が高林顧問

 廃タイヤのリサイクル状況は、2008年度において廃タイヤ発生量105万6000トンに対しリサイクル量93万5000トンと、前年度より1万7000トン減少した。リサイクル率としては前年度と同じ89%である(JATMA調べ)。リサイクル量の減少は、原油や石炭の価格が上昇し、代替燃料として廃タイヤの需要が高まっているものの、国内のタイヤ市場が縮小傾向にあること――とくにトラック用をはじめとする生産財が低調に推移――に連動し、廃タイヤ全体の発生量が減少していることによる。

 「廃タイヤはエネルギー効率に優れ、カロリーは石炭よりも高い。それに加え、燃焼に際しての二酸化炭素排出量は他のエネルギーに比べ少ないという特性を持っている」と、高林顧問は説明する。

 地球温暖化防止の観点から二酸化炭素の排出削減が求められている時勢において、これは非常に高いポイントとなる。そのため代替燃料としての引き合いはますます強くなる一方だという。しかも近年、製紙会社のバイオマスボイラーが相次いで稼働していることも、廃タイヤの需要を押し上げている――このように需要が年を追うごとに増加する反面、廃タイヤの発生量は減少傾向が続く。

イトウ本社
イトウ本社

 2009年度は、エコカー減税などの諸施策により、とくに下期において新車販売が回復したことから、廃車台数が増加した。それによって、廃タイヤの発生量が増加に転じたかというと、そうもいかないようだ。確かに、廃車時における廃タイヤの発生本数は増えたものと見られる。ただ、近年の傾向として、コンパクトカーの構成比が高いことから、タイヤは総じて小径のものが多い。結果として、廃タイヤは重量ベースでは逆に減少しているという。

 このことは同社の扱い量にも表れている。小松課長によれば、2009年度は前年実績に対し10%ほど減少したとし、現在もそれが回復するには至っていないと指摘する。この需要と供給のアンバランスにどう対処するか。それが廃タイヤの中間処理業共通の課題だ。

 伊藤社長は「いかに安定的に製品を供給していくか、われわれに課せられた役割だと認識する。千葉は工業地帯であることから、地域の工場で使われるコンベアベルトなど、タイヤ以外の製品を多く扱うことができるように努めている」と話す。

 業界団体であるJSRAでは、「廃タイヤを適正価格で適正に処理すること」を行動基準としている。それに則り、地域に密着した事業を展開するイトウ。直面する大きな課題の一つ、需給ギャップに適切な対応を図るとともに、高品質なチップ製品の安定供給に今後も取り組んでいく。

省人化と処理能力高める最新機器

廃タイヤの投入口
廃タイヤの投入口

 イトウでは、2007年に「新型破砕機」を導入した。それにより1日当たりの廃タイヤ処理能力が大幅に向上した。

  その処理工程は、廃タイヤの投入→破砕→規格選別→保管と進行するが、ほぼオートメーション化されている。まず自社トラックで運搬した廃タイヤをベルトコンベアに乗せ、破砕機に投入する。以前はサイズの分類やビード除去など前処理が必要だったが、破砕機導入後は建設機械用タイヤやソリッドタイヤなどの特殊タイヤを除き様々な種類を同時に投入しても全く問題ないという。

 最新鋭の破砕機には大小42枚の刃が交互に挟み込むように設置されている。実際に機械を稼働してもらったが、硬いワイヤー類も含め、瞬く間に破砕され、次々と選別工程に送られていく様子は圧巻だ。

製品の保管庫
製品の保管庫

 チップには2インチ角という規格があるが、それを選別する工程が非常にシンプルかつ確実な方法であるのも特徴的である。ベルト下部に升目のように穴が開いており、規格内に収まるチップは落下し保管工程に移動するが、規格外のものはベルトに乗ったまま再度、破砕機に戻される仕組みだ。ほとんどの場合、破砕機を2回通過させると規格内のチップが完成する。また、破砕機の横には200トンのチップを保管するためのスペースが確保されている。

 取材中、約700本の廃タイヤを満載したトラックが到着した。伊藤嘉靖社長は「当社の破砕機は1時間で6.8トンの処理能力があるので、この数量ならわずか45分程度で全工程が終了する」という。

 伊藤社長によると今後、タイヤを投入するホッパーを導入する計画だという。さらに効率良く処理を行い顧客の要望に応えていく方針だ。


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