ヨコハマタイヤリトレッド 生産量拡大し、シェア倍増目指す

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カテゴリー: レポート, 現地

生産量を倍増し、シェア拡大図る

 横浜ゴムはリトレッドタイヤ事業の強化に乗り出す。これまで他社と比べて取り組みが遅れていたが、子会社のヨコハマタイヤリトレッド(株)では課題だった台タイヤの回収率を高め、生産量を倍増させる方針を打ち出した。引き続き堅調な需要が見込まれるリトレッド市場で巻き返しを図る。

 近年、ユーザーの環境意識やコスト削減志向が以前にも増して高まっていることを背景に、リトレッドタイヤの需要は堅調に推移している。国内のTB用リトレッドの市場規模は2009年に推定で年間100万本を突破して以降、毎年増加傾向が続いている。

 TB用タイヤの更生化率は欧米と比較すると国内の水準は低いが、年々その比率は上がってきており、2020年には約3割に達する見通しだ。

 こうした中、横浜ゴムは今年1月にヨコハマタイヤ東日本リトレッド(株)と山陽リトレッド(株)を統合し、横浜ゴムの100%出資子会社として新たにヨコハマタイヤリトレッド(株)(本社・広島県尾道市)を設立。生産拠点として尾道市、北海道苫小牧市、埼玉県入間郡、愛知県みよし市の全国4カ所に事業所を置いた。

田中社長
ヨコハマタイヤリトレッドの田中社長

 今回の統合は、横浜ゴムがグループを挙げてリトレッド事業の展開を加速していく姿勢を明確に示すものだ。これまでは、例えば西日本の工場で生産したものは同じエリアで販売するという、“地産地消”の体制が取られていたが、1社体制にすることにより需要の多い都市部で台タイヤを回収して各工場に配分する、あるいはサイズや品種により、生産のすみ分けを図るなど効率的な運営が可能になる。

 ヨコハマタイヤリトレッド(株)の田中孝一代表取締役社長は、「リトレッド市場は以前と比べて様変わりしている。環境意識の高まりで非常に注目され、また必要とされる時代に入ったと実感している」と話す。そのうえで「リトレッドに対する取り組みが遅かったという反省もあり、これを早期に取り戻していきたい」と意欲を示した。

 一方、旺盛な需要に対し、供給が追いついていないのが現状だ。これは台タイヤ不足が最大の要因で、以前から業界全体の課題となっている。

 これについてヨコハマタイヤリトレッド(株)では、販売会社の(株)ヨコハマタイヤジャパンと連携して新品で購入したユーザーから直接台タイヤを受け入れる委託管理――新品とリトレッドを一括でサポートするパッケージプラン「エコメソッド」の比率を上げることで対応していく。

 この場合、同社にとってはタイヤの使用状態を正確に把握できるため、台タイヤとしての信頼性が高まる。また台タイヤはユーザーの所有物なので、顧客にとってもリトレッドにかかるコストは大幅に抑えられるというメリットがある。現在、委託比率は3割だが、これを早期に5割程度まで引き上げる計画だ。

 同社では「現在の生産シフトは1直。これを工場によっては2直、3直へ拡大することで、設備投資をしなくても本数を上げることが可能」とし、2020年をめどに生産能力を倍増させ、リトレッド市場でのシェアを現在の約1割から2割程度まで高める。

 また最近では、新品タイヤが上市されてからリトレッドを開発するまでの期間を従来の半分まで短縮する取り組みも始めており、徐々に成果が表れている。田中社長は「早期に潤沢な供給ができる体制にし、市場に合ったサイズや品種を展開していく」と述べ、さらなる事業強化に取り組む姿勢を表明した。

2回リトレッド実現のために

ヨコハマタイヤリトレッド尾道事業所
ヨコハマタイヤリトレッド尾道事業所

 リトレッドタイヤは、その加工方法により、「リモールド方式」(ホット式)と、「プレキュア方式」(コールド式)――この2つタイプに大別される。ヨコハマタイヤリトレッド(株)が生産する製品は全て「リモールド方式」を採用している。両者の違いについて、同社の高橋修専務取締役尾道事業所所長は次のように解説する。

 「まず出来上がりが違う。コールド式はすでにパターンが刻まれているトレッドゴムを繋ぎ合わせるので継ぎ目ができる。またトレッドと台タイヤの間の接着面の仕上がりがあまり良くない場合もある。それに対してホット式はゴムを巻いて、新品と同じように加硫するので、継ぎ目が綺麗で仕上がりが非常に良くなる」

 また、プレキュア方式は比較的小規模な設備でも製造が可能なため、少量のタイヤを作るのに向いている。一方、リモールド式は金型や加硫機といった大掛かりな設備が必要となる。多品種少量生産か、大規模な設備で大量生産を目的にしているのかという違いもある。

リトレッドは必須の時代に

 昨今の市場環境について田中孝一社長は「ユーザーの意識が大きく変わってきた」と話す。これまではコスト面でのメリットが重視されていたが、現在は環境にいかに対応するかが強く求められている。

ヨコハマタイヤリトレッドの工場内
ヨコハマタイヤリトレッドの工場内

「極端に言うと以前は新品タイヤを売るためにリトレッドがあった。だが、今はトータルでメリットを出さなければならない。リトレッドが供給できないのであれば新品も買って頂けない時代に入ってきた」と、高品質なリトレッドタイヤを生産することの意義を説明した。

 同社ではリトレッド事業強化の一環として台タイヤの回収率向上や生産能力増強のほか、リトレッド回数を2回に増やす取り組みを進めている。これまで国内市場ではリトレッド回数は1回というケースがほとんど。同社でも2回までタイヤを使い切るユーザーは現状数%だが、「2回やらないと理屈が合わない。台タイヤが不足している中で2回リトレッドするようにしなければ抜本的な解決にはならない」

 ただ、その場合はよりシビアな台タイヤの管理が求められるため、「ユーザーの空気圧や荷重、走行路面など詳細な情報を得ながら限られた範囲内で進めている」。また最近では尾道事業所に設計者が赴任するなど、開発拠点のある平塚製造所との連携を迅速化している。「年々ユーザーからの要望は増えているため、今後は横浜ゴムと一体となって開発を進めていく」

 さらに田中社長は「リトレッド事業そのものを海外展開というのは今ところないが、見学に来るお客様や我々のセールスから『こんなに出来が良いならやるべき』とお声を頂くこともあり、事業として考えていく必要はある」と話す。

 そのうえで「これだけ見た目が良いということであれば、横浜ゴムのTBタイヤ工場とセットで展開するというのは有効だと感じ始めている」と述べ、将来的にはリトレッド事業をグローバルへ拡大する可能性を示唆した。


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