住友ゴム工業 白河工場「労働災害ゼロ」を目指す

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カテゴリー: レポート, 現地

 住友ゴム工業は3月7日、福島県の白河工場内に併設している「安全体感・環境道場」を報道陣に公開し、同工場が取り組んでいるCSR活動を紹介した。作業の現場で起こりうる危険を疑似体験することで、従業員の危険感受性をいかに引き上げ、危険予知能力を高めていくか――「労働災害ゼロ」を目指した取り組みの一端を紹介する。

“恐怖感”を経験

 白河工場は、国内タイヤ工場で最大級の生産規模を誇る。敷地面積は60万7000平方メートル、約1700名の従業員が働いている。

白河工場
白河工場

 1974年の操業開始当初から「自然と調和した工場」「公害を出さない工場」「地域と密着した工場」といった3つの方針を掲げ、植樹活動や工場排水を利用したホタルの育成、ボランティア活動、厚生施設の開放などを行っている。年々、活動の領域は広がり、最近では森林インストラクターの育成や地域の中学生を対象にした野球大会の立ち上げ準備を始めた。

 また操業40周年を迎える2014年には記念行事を計画しているほか、工場見学会やイベントを通じて、今まで以上に近隣自治体や地域住民との交流を推進していく。同工場総務課の熊田課長は「地域に根ざした活動で、『住友ゴムがここにあってよかった』と言われるよう地域に信頼される工場を目指す」と今後の展望を語る。

 地域からより一層の信頼を得るため、欠かせない活動の一つに「安全な職場づくり」が挙げられるだろう。同工場では「品質はもとより、安全は最優先」との考えのもと2007年3月に「安全体感・環境道場」を開設した。

階段昇降
階段昇降

 齋藤健司工場長はその目的に次のように話す。「従来は座学中心の教育を行っていたが、やはり聞くだけであまり身についてこない面があった。安全意識・知識のすり込み教育を実践して安全職場を実現する」

 「道場」で指導員を務めるベテラン従業員は「安全の決め手は一人ひとりの安全に対する感度をいかに高めるか。機械や設備は人間と違って『加減しない』ということを体感してもらっている」と、その重要性を説明する。

 ここでの教育は、工場内で使用する機器や危険な箇所を再現し、現場で起こりうる事故・危険を擬似的に体験する実践的な内容となっている。いわば事故やミスが起きた時の恐怖を意図的に経験するための施設だ。体感プログラムは、過去に事故があったものや他工場で起きた事例を参考に、現在は30種類ほど用意されている。

巻き込み体感
巻き込み体感

 2008年からは厚生労働省の委託を受け「危険感受性向上教育」の場として外部企業から受講生を受け入れている。工場の従業員と合わせ、2013年2月末時点で約2400名がここで研修を受けた。

 今回は、タコ足配線や段差の危険性など4種類のメニューを見学したが、とくに印象に残ったのは「巻き込まれ・挟まれ災害」だ。

 回転するローラーに機械類の油を拭き取るウエスを近づけるとどうなるか――ローラーはゆっくりとした速度で回転しており、一見すると危険は感じられない。だが、ウエスがローラーに接近した瞬間、一気に巻き込まれ体ごと持っていかれてしまった。これが実際の作業現場で、巻き込まれたのが作業着の袖や自分の毛髪だったらどうなるか、すぐに非常停止ボタンを押す判断ができるだろうか。事故の怖さを思い知らされた瞬間だった。

共同作業危険体感
共同作業危険体感

 白河工場では、「安全体感・環境道場」以外に3つの「道場」を開設している。まずは2004年10月に開設した「技能道場」。社会人としてのマナーやルール教育、タイヤの正しい作り方を身につけ「タイヤ製造に従事できることを認定する」教育制度を独自に設け、ここで認定を受けた上で配属先に送り出している。

 さらに2007年6月には「品質道場」をスタート。これはユーザーの要求品質を常に追求し、「世界一の品質を創造する」ため、現場改善力・問題解決能力を身につけ、実践する人材を育成することが狙い。具体的には、QCの勉強会や品質情報の提供、毎月のパトロール活動を継続して品質向上に努めている。

 2007年8月に開設した「たちんぼう道場」では、生産性向上のため、現場に何時間も「足が棒になるまで」立ち続け、安全面も含めて改善案を探す活動を実施している。

 これらの活動は、いずれも現場で起こりうるリスクを的確に想定するとともに、若い世代を育成していくことに重点が置かれているようだ。

 同工場では、以前は年間約30件の事故が起きていたが、「安全体感・環境道場」を導入した2007年以降は発生件数は10件以下まで減少しているという。こうした地道な取り組みの成果が表れたといえるだろう。だが、「目標はあくまで事故件数ゼロ」。それを達成するため、今後も教育内容の改善や拡充を推し進めていく。


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