台湾企業 探訪② 南港輪胎/NANKANG

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カテゴリー: レポート, 現地

 ――日本市場でこれから伸ばしていく上でNANKANGタイヤの強みは何だと思いますか。

 「NANKANGタイヤは創業55年の歴史があり、横浜ゴムと約36年間関係がありましたので、いろいろなことが日本スタイルです。工場を見ていただければ、それがよくわかると思います。
 その歴史の積み重ねによって磨いてきたものが、開発力、技術力、品質保証力で、そのどれをとっても水準は高いと自負しています。認証取得の実績からもわかると思います。
 4つ目の特徴はコミュニケーション力です。日本と台湾は非常にいい関係ですし、歴史的に台湾メーカーは日本スタイルが多く、NANKANGはその代表格ですから、とくにコミュニケーションがしやすい会社だと思っています」

 ――エコタイヤの開発においては材料面がとくに重要なポイントになりますが、その点、先端のタイヤ材料は確保できるのでしょうか。

 「台湾のTSR(台湾合成ゴム)とは共同開発を行っていますが、日本や欧州の有力ポリマーメーカーともコミュニケーションはできています。ですからS-SBRをはじめとした先端材料を確保することは問題ありません。
 われわれ技術開発部門がいま一番力を入れていることは、構造設計においては軽量化です。またキャップトレッドやサイドウォールの材料構成をどうするかというのも重要な課題です。タイヤラベリングは欧州と日本だけでなく、これから全世界に波及していきます。ですからエコタイヤの開発への取り組みを加速していきたいと考えています」

 ――スタッドレスタイヤの開発についてはいかがでしょうか。

 「スタッドレスタイヤを開発したのは当社が世界第7番目です。すでに北海道では8年前に「SN-1」を発売し、6年前には「ESS N-1」というタイヤの開発に成功しました。開発の際は必ず士別市のテストコースを利用しています。もう一つ、LUCCINUIのスタッドレスタイヤを昨年発売しています」

 ――OEビジネスとリプレイス市場に対する考え方を教えてください。

 「やはりグローバル成長を実現していくには世界のリプレイス市場に軸足を置く必要があります。OEビジネスは重要ですが、それ以上にリプレイスで勝負していかなければ将来は開けないと考えます。それは当社のポリシーです」

工場ルポ/転がり抵抗実験室設置、ミニテストコースも完備

NANKANGの正門
NANKANGの正門

 NANKANGは台湾最初のタイヤメーカーで、創業55年の歴史を持つ。新竹縣新豊郷にある本社・新豊工場は、建物の造り、建物内部の雰囲気、あるいは工場の製造管理の仕方、検査に対する厳格さなど、いたるところが日本のタイヤ工場とよく似ている。

 、本社事務所棟から一歩外へ出ると工場棟が立ち並んでいる。広大な敷地内にはR&Dの施設も併設されており、奥行きがかなり深そう。

 最初に案内されたのはR&D施設。その中のゴムの引っ張り試験などの実験室を窓越しに見せてもらったが、ごく一般的な設備のようだった。

 次に向かったのは、転がり抵抗(RRC)試験専用の実験室。真新しいグリーンのコンクリート造りで、一見何の変哲もない建物と思いきや、室内は先端設備の匂いがする。なるほど2年前に導入したばかりのドイツ製ドラム試験機とデータ解析用にコンピュータ設備が据え付けられている。

 この実験室は昨年、ドイツの第三者試験認証機関、TUV SUDから認証された施設で、こうしたケースは台湾で同社が初めて。ここで測定したRRCの試験データは欧州などの認証機関に提出され、改めて他のところで試験をせずともTUV SUDマークを商品に付けることができる。そのメリットは大きいに違いない。

 RRC実験室から出て、さらに通路を抜けていくと目の前に広大な屋外スペースが広がった。そこは同社独自のタイヤミニテストコースだった。

 長さ約400m。多様な路面コンディションを設定し、また散水によるウェット路面の設定も可能。新開発タイヤの乗り心地やウェットブレーキ性能、操縦安定性などを、ある程度ここでテストできるようになっている。ここで得られたデータは分析され、開発にフィードバックされる。

 彰化県に政府系の台湾最大のテストセンター「ARTC」があるのだが、そこでもう一度試験を実施して評価を行えば実走テストは盤石だ。

 ミニテストコースがあることで研究開発の時間短縮につながり、開発スピードのアップを図っている。

 同社の技術副社長である彭添城氏は、「新豊工場は当社の研究開発および経営センターである。グローバルに事業を拡大する中で、今後海外で作られていく新工場の“模範工場”として成長していく」と話す。

 本社・新豊工場、中国の張家港工場に次ぐ第三工場がアジアのどこかに建設される日がくることは間違いないだろう。そうなれば、まさに日本式のタイヤ工場がNANKANGタイヤによって他の国に伝えられていくことになる。

 新豊工場は1973年に稼働を開始。敷地面積は18万8430㎡。現在の生産品目は乗用車用タイヤとライトトラック用タイヤを中心に、トラック・バス用、MCタイヤなどとなっている。日産能力は1万3000本。従業員数は約1000人。

 企業理念は「誠信」(誠実と信頼)、「務實」(内部管理=自己管理と自己保証、外部管理=利潤追求と顧客満足)、「創新」(経営、製品、技術、サービスにおける創造と革新というような意味)


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