台湾企業 探訪① 日本市場に熱い視線

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カテゴリー: レポート, 現地

 新車用4500万本、市販用7000万本の年間需要をもつ日本のタイヤ市場に、台湾ブランドが熱い視線を注いでいる。歴史的に日本のタイヤメーカーと関係が深く、開発・生産・品質管理などの方式は日本と酷似している。近年では積極的にグローバル化を推進しながら実力レベルを上げてきた。いまや、彼らの国際競争力を見過ごすことはできない。欧州や日本でラベリング等級を取得し、また日本向けスタッドレスタイヤの開発にも意欲的だ。一方で日本市場は、ネット通販や量販店などでアジアンブランドをよく目にする時代となった。しかし、価格を売るだけでは長続きしないのも事実。真の実力が試される市場でもある。台湾ブランドは今後、これまでのアジアンブランドのイメージを変え、新風を吹かすことができるか。台湾メーカーのNANKANG(ナンカン)、正新/MAXXIS(マキシス)、KENDA(ケンダ)の3社を訪問し、彼らの視線の先を探った。

激戦の日本市場に熱い視線

台湾マップ 台湾ブランドといえばNANKANG、FEDERAL、MAXXIS、KENDAなどが日本でも知られているブランド名である。半年前、1月のオートサロンに台湾勢が揃って出展し話題となった。

 日本のリプレイス市場では、2年ほど前まで続いていた超円高を追い風に〝廉価なアジアンタイヤ〟が急増した経緯がある。その中で台湾ブランドも例外ではなかった。様々な
廉価品に混じる形で販売量が増加したことは事実だろう。

 とくに、その販売チャネルが新手のネット通販を主体としていたために、タイヤ市場全体に少なからず影響を及ぼしたことは記憶に新しい。

 量販店の代表格である大手オートショップでは、単に輸入タイヤを値頃感の高い目玉商品として販売するだけでなく、特定ブランドと契約してPB商品や専売品を品揃えするケースも目立つ。また家電業界のように店頭販売と並行してネット通販にも力を入れ出している。市場の需要環境や競争環境が変化する中で、少しでも消費者を呼び込もうと躍起だ。

 その量販店に品揃えされた輸入品には韓国ブランドが多く、輸入品の中では欧米のメジャーブランドに迫る知名度を既に獲得していることは否定できない。また日本ブランドや欧米のメジャーブランドの海外仕様品が輸入販売されるケースも一定量あるとみられる。

 まさしく日本市場は、世界のブランドがしのぎを削る激戦市場。そうした市場に台湾ブランドが、今後どのような形で存在感を示してくるのか、大いに注目されるところだ。

「日式」でモノづくり

 台湾メーカーが他国のメーカーと違うのは、日本のタイヤメーカーとの関わりが深いことだろう。

台北市内
台湾の自動車保有台数は四輪車670万台、二輪車1460万台

 NANKANGブランドの南港輪胎は、1959年の会社設立時から36年間、横浜ゴムと提携関係にあった。とくに1983年からは横浜ゴムの資本が入り、87年の大型増資以降の8年間は社長以下、管理職の多くが横浜ゴムからの派遣者だった時代もある。社員に日本語を話せる人が多いのはそのためだという。確かに会社の雰囲気ばかりか生産現場の仕事のやり方を見ても、横浜ゴム風な印象がある。

 MAXXSISブランドでグローバルに事業展開し、世界のトップ10に入った正新橡膠工業は、かつて東洋ゴム工業と合弁で中国に生産拠点を設立するなど親密な関係にあった。また中国工場(厦門)ではブリヂストンの自転車タイヤをOE生産している。

 FEDERALブランドの泰豊輪胎はダンロップの住友ゴム工業と、その昔はブリヂストンとも提携関係にあった歴史がある。加えて、台湾普利司通は1980年代初頭に台湾の中一ゴムと合併契約してできた会社が前身だ。

 歴史的に日本のモノづくりに学び、〝日式〟をよく理解して、それを活かしてタイヤづくりを続けているというのが台湾ブランドの一つの特徴なのである。

 台湾メーカー幹部の多くは「日本のリプレイス市場は特殊で難しい市場であることはわかっている」という。しかし、あえて日本市場重視の路線を描いた。

 その根底には、これまで四輪、二輪の日系新車メーカーとのOEビジネスを通じて技術・品質・コストすべての面で鍛え上げられてきた経緯がある。世界各種の認証も取得し、また新車メーカーから表彰されることもある。


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