住友ゴム、ASEANへ向け供給拡大図る タイ第3工場が本格稼働

第1工場内部
第1工場内部

 第1工場では同社独自の新工法「太陽」を全面的に導入し、主に乗用車用のハイパフォーマンスラジアルタイヤを生産している。

 成形工程に採用した「太陽」は、タイヤの高い精度と高性能を実現するためのシステム。従来はトレッド・サイドウォール・インナーライナーの各部材に継ぎ目が生じていたが、新工法ではテープ状にしたストリップゴムを、設計した厚みで定常に巻き付けるのが特徴。これにより、真円度が高く軽量な高性能タイヤの製造が可能となる。加えて各工程を連結させて、設備のコンパクト化と生産効率向上をも実現している。

 「太陽」は1つのユニットに4つのラインを配置しており、1ユニットで日産4000本の生産能力を有する。現在9ユニットまで稼働しており、今後の計画では11ユニットまで設置することが決まっている。

 従来工法を採用した第2工場では、乗用車用ラジアルタイヤやバン・4WD用ラジアルタイヤを生産している。現在、建物は全て完成しており、全体の75%が稼働している。残り25%についても間もなく機械の設置が完了し、フル生産に入る計画だ。

世界戦略の重要拠点

AGタイヤとゴムクローラ
農機用タイヤ(左)とゴムクローラ

 同工場は世界戦略の重要拠点と位置づけられ、世界各国に向けて高性能タイヤが生産されている。2005年に会社を設立した際、この地を選んだのもタイ最大の貿易港であるレムチャバン港へのアクセスに優れていたことが大きな要因だった。現在、生産量の84%が輸出向けで、仕向地は北米40%、欧州40%、中近東やオセアニアなどその他が20%となっている。

 量産設備として「太陽」工法を採用したのは同工場が初めて。最近では、来年稼働予定のトルコ工場のスタッフらが研修に訪れるなど、これまで培ってきた経験や技術を、新たな生産拠点に伝授していくという重要な役割も担っている。

 工場見学の後に行われた会見の席で、スミトモラバータイランド幹部との一問一答は以下の通り。

 ――農業機械用タイヤの販売について
 「農業機械用タイヤの生産比率はOEとリプレイスがほぼ半々になる。タイの市場規模は、新車生産が年間7、8万台なので新車用タイヤ需要は30万本前後、補修用は新車用と同じくらいの需要があると推定している。平均すると3年くらいでタイヤを交換するとみており、この想定のもとにシェアは50%を目指していきたい」
 「タイ国内で農業機械用タイヤはブリヂストンと、それ以外に主に3社が生産している。タイのトラクターメーカーは日系が90%、クボタやヤンマーといった日系メーカーのシェアが高い。当社は日系メーカーと長い実績、信頼がある。ダンロップブランドのイメージと、市場の中では当社のタイヤは見た感じが美しい、ゴムの感触が良いという評価を頂いており、そこで強みを発揮していく」

 ――乗用車用タイヤのOE展開について
 「現在、当工場で生産するファルケンタイヤを直接納めているカーメーカーは日系1社、日系以外2社の合計3社ある。タイ工場の生産量のうち、OE向けが約14%でそのうちのほとんどは日系カーメーカー向けとなっている」
 「希望としてはASEANを中心にOEをさらに伸ばしていきたい。また日系以外のカーメーカー向けにも取り組みを始めた」

 ――ファルケンブランドの割合と目標は
 「生産比率はファルケンが40%強、ダンロップが40%弱となっている。今の段階では分からないが、将来的にASEANへの供給比率が高まってくれば、ダンロップの比率が高まってくるかもしれない。欧米向けの輸出ということになると、さらにファルケンの比率が高まってくる」

 ――第1・第2工場の今後について
 「現時点では10万本規模の工場でここからグローバルにタイヤを供給していくという役割はそこでストップするかもしれない。今後新たな土地を購入して拠点を拡大していくいう考えはない」
 「グループ全体でいうとトルコ工場、ブラジル工場が立ち上がる。タイからメインに出荷しているのが欧州・北米向けなので、ASEAN域内での需要がさらに高まってくれば、ASEANへの供給比率が高まってくる。欧米向けの輸出量は新たな拠点でカバーすることになる」


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