住友ゴム工業は16日、東京本社で2024年度年末社長会見を行った。山本悟社長=写真=は24年を振り返り、概況と各事業について次のように述べた。
一部自動車メーカーの生産停止による影響やインフレなどによる市況停滞があったが、円安環境もあり利益状況は大幅に改善した。顧客ニーズに対応した高機能商品の開発・増販に取り組み、構造改革、経営基盤強化を強力に推進した。
中期経営計画の進捗は、構造改革の最優先課題としていた北米事業を含め、欧州医療用ゴム事業など6事業で目途付けを完了した。北米事業の米国タイヤ製造子会社の生産終了・解散については「生産性改善と収益化の時間軸が合わないと判断し、苦渋の決断をした」と述べ、一時的な損失は発生するが25年以降に構造改革効果が出てくる見通しとした。
成長事業の基盤づくりについて、山本社長は「今年は何と言ってもシンクロウェザー」と、独自のアクティブトレッド技術を搭載した第1弾商品が好スタートを切ったことを強調した。10月の発売以降、順調に販売は伸長しているという。販売店舗に「認定店」制度を導入したが、当初の想定を上回る1万5千店超の店舗が加盟した。
「欧州ではこの4年間でオールシーズンタイヤの構成比が2倍になった。日本でもオールシーズンタイヤ市場の創出をめざしていく。海外の投資家からもアクティブトレッド技術への期待の声がある」と、強気の構えを示す。次世代放射光施設「ナノテラス」を活用し、さらなる技術開発を進める考えだ。
センシングコアビジネスは1月に米国のViaduct社へ出資し実証実験を重ねてきた。「タイヤを含めた車両の故障予知サービス」開始に向け、11月に北米拠点を開設した。25年は自動運転社会での可能性やフリートマネジメントの効率化を訴求していく。
ゴムに関する研究は25年度以降も積極的に進める方針を明らかにした。タイヤにかかわる研究では「タイヤ空力シミュレーション」「パターンノイズシミュレーション」、新たな取り組み「がん細胞吸着キット」の開発を紹介。産業品事業では、令和6年能登半島地震で制振ダンバー「MIRAIE」設置住宅は全壊・半壊ゼロであり、制振技術のさらなる改良を進めると語った。
山本社長は、「事業環境は決して楽観できるものではなかったが、グループを挙げて構造改革と収益改善を前進することができた」と総括した。