使用済みタイヤの活用へ 新たな連携がスタート

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カテゴリー: ニュース

 現在、主に燃料として使用されている使用済みタイヤを再生利用するための開発が活発化している。ブリヂストンはENEOSなどと連携し、また横浜ゴムと日本ゼオンはそれぞれの知見を生かして廃タイヤを分解、タイヤ原料として再利用する「ケミカルリサイクル」の実用化に向けた取り組みを始めた。脱炭素へのニーズが強く求められる中、資源の有効活用につなげる。

 ブリヂストンは2月18日、廃タイヤから合成ゴムの素原料となるイソプレンを高収率で製造する「ケミカルリサイクル技術」の共同研究を開始したと発表した。同社と産業技術総合研究所(産総研)、東北大学、ENEOSが使用済みタイヤのケミカルリサイクル技術とその評価技術の開発を行い、日揮ホールディングスがパイロットプラントの設計を担当する。

ブリヂストンとENEOSの共同プロジェクトのイメージ
ブリヂストンとENEOSの共同プロジェクトのイメージ

 ブリヂストンでは「企業とアカデミアの知見と技術を活かして、持続可能な社会の実現に貢献する革新的なリサイクル技術を開発する」としている。2030年までに社会実装に向けた実証実験を行うことを目指す。

 また、同社は同日、ENEOSとともに「使用済みタイヤの精密熱分解によるケミカルリサイクル技術」の社会実装に向けた共同プロジェクトを開始したと発表した。廃タイヤを精密熱分解して得た分解油をナフサなどの石化原料化し、ブタジエンをはじめとする合成ゴムの素原料を高収率に製造する技術の実証実験を行う。

 石橋秀一CEOは「本プロジェクトを通じて、使用済みタイヤを原材料に『戻す』リサイクルを事業として確立することは、当社グループのサステナビリティビジネス構想の実現につながるもの」としている。

 また、ENEOSの大田勝幸社長は「当社が長年培ってきた技術を十分に生かしながら、循環型社会実現に向けてサプライチェーン全体で協力し、取り組んでいく」とコメントした。

 両社はタイヤ・ゴム産業、石油・石油化学産業で培ってきた技術やノウハウを融合し、タイヤに関わる産業のカーボンニュートラル化および持続可能な社会の実現への貢献を図る。

 なお、それぞれのプロジェクトは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」に採択された実証事業「使用済みタイヤからの化学品製造技術の開発」における研究開発項目として支援を受ける。

 この基金事業は、日本政府が掲げる「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という目標の達成に向けて、エネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションの加速を目指し、経済産業省が設置したもの。この目標に経営課題として取り組む企業などに対して、10年間にわたり研究開発・実証、社会実装までを継続してサポートする。

 「グリーンイノベーション基金事業」には、日本ゼオンと横浜ゴムが実施する「炭素資源循環型の合成ゴム基幹化学品製造技術の開発」も採択された。

 現在、国内の使用済みタイヤの多くは熱回収により燃料として利用されている。また、今後も世界的なタイヤ需要の増加に伴い、石油由来の合成ゴム等の原材料使用量が増加することが見込まれている。

 今回の実証事業では、廃タイヤやバイオマスなどの再生可能炭素資源から、ブタジエンやイソプレンを高い収率で製造する2つの高度な技術を確立し、2030年代に社会実装することを目指す。これによりタイヤ・ゴム産業の資源循環性の向上、カーボンニュートラル化への貢献を図る。

 日本ゼオンと横浜ゴムは「両社が培ってきた技術やノウハウを融合し、持続可能な社会の実現へ貢献する」としている。


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