国内4社の2021年業績 高性能タイヤの販売増が収益牽引

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カテゴリー: ニュース

 国内タイヤメーカー4社の2021年12月期決算と2022年の業績予想が出揃った。一昨年は新型コロナの影響を大きく受けたが、その後、需要は着実に回復。特に収益性が高い高性能タイヤの販売がグローバルで拡大する中、21年は売上高や利益面で過去最高が相次いだ。一方、今期は旺盛なタイヤ需要は続くものの、記録的な高騰が続く海上輸送コストや原材料高が利益を押し下げる。各社は主要市場で価格改定を進めつつ、ミックスの改善を急ぎ、局面を乗り越えていく。

2021年業績および2022年予想
2021年業績および2022年予想

 2021年は下期にかけて海上運賃上昇や原材料高の影響が顕在化してきたものの、北米を中心とした販売好調を背景に全社が増収増益を達成した。ブリヂストンのタイヤ事業は、プレミアム領域を中心にタイヤ販売が大きく伸長。グローバルのタイヤ販売本数は乗用車・小型トラック用、トラック・バス用が前年比でプラスに回復。15日の会見で吉松加雄グローバルCFOは「乗用車用の高インチタイヤや北米でのトラック・バスの市販用の販売は2019年と比較しても大きく上回る水準」と説明した。

 また、鉱山用・建設用タイヤは、旺盛な建築需要による大型・中小型の新車用の大幅増をはじめ、大きく回復している。

 住友ゴム工業は、事業利益に対して原材料や北米アンチダンピング関税、海上運賃、固定費、経費が減益要因となったが、価格改善や増販効果、構成の良化、直接原価の改善が増益に働いた。

 タイヤ事業は売上収益が17%増の7950億円、事業利益は1%増の414億円。新車用で半導体不足の影響が響いたものの、コロナ影響からの回復に伴い販売本数は全体で7%増、市販用は8%増、新車用は3%増となった。SUV用や18インチ以上の高機能乗用車用タイヤは12%増え、構成比は2ポイント増の34%だった。

 横浜ゴムの2021年度決算は売上収益と各利益が過去最高となった。タイヤ事業の売上収益は18%増の4702億円、事業利益は78%増の427億円となった。

 タイヤ販売本数は国内の新車向けが落ち込んだものの、海外市販用は2019年を上回るレ
ベルに回復。同社では「北米を中心に値上げが浸透したほか、為替が円安に推移したことが寄与した」としている。

 ATGも農業機械用や産業車両用タイヤの販売好調を受けて、過去最高の収益を達成した。

 TOYO TIRE(トーヨータイヤ)のタイヤ事業は、売上高が過去最高の3546億円となり、営業利益は550億円と過去2番目の水準となった。15日に開いた説明会で清水隆史社長は「海上運賃や原材料価格の高騰の影響を受けたが、北米を中心に販売でカバーした」と話した。

 北米市場は大口径タイヤの販売が好調で、米国工場の増強や値上げによる相乗効果もあったという。また国内では市販のSUV用タイヤの販売に注力し、販売を伸ばした。

2022年は海上運賃、原材料高に懸念

吉松CFOと東COO
会見するブリヂストンの吉松CFO(左)と東COO(右)

 2022年のブリヂストンのグローバルタイヤ販売は、対前年比で乗用車用タイヤ、トラック・バス用、産業車両用の全てでプラスを見込む。また、18インチ以上の乗用車用も伸長する見通し。吉松CFOは「タイヤ需要は地域、財により差異はあるが、全体的には需要増となる」と話した。

 今期は、原材料価格や海上運賃、労務費、エネルギー費の高騰が減益要因となる。一方、プレミアム戦略の継続強化や価格マネジメントなどの施策を推進することで増益を確保する見通し。

 吉松CFOは「欧米では昨年、価格マネジメントや販売ミックスの改善が効果を上げた。今年も複数回の戦略的価格マネジメントを実行していきたい」と述べた。東正浩グローバルCOOは「国内でも値上げを発表した。しっかりと浸透させていく」と展望を示した。

 住友ゴムは、2022年通期の売上収益が同社グループとして初めて1兆円を超える見通し。

 ただ、山本悟社長は9日の会見で「足元の感染再拡大により経済活動が低迷し、先行きは予断を許さない」とコメント。また、「原材料の相場価格は引き続き上昇し、海上輸送コストも負担増となる」と述べた。

 タイヤ事業の売上収益は14%増の9035億円、事業利益は21%減の325億円と予想。山本社長は「注力市場で販売の勢いを継続させ、高機能商品の拡販や市況を見ながら値上げも実施する」と話した。

 横浜ゴムは2022年からATGをタイヤ事業に集約した。ATGを含む同事業の売上収益は、値上げの浸透などで6470億円と好調に推移する見通し。約8%の減益を見込むものの、タイヤ販売は国内外で前年を上回ると予測している。

 TOYO TIREのタイヤ事業は、売上高が過去最高の4080億円を見込む。営業利益は16%減の460億円に落ち込む中でも営業利益率は11.3%と高い水準を確保する。

 昨年実施した米国工場の増強のほか、セルビア工場が7月から稼働するため、タイヤ生産量は対前年比16%増となった2021年から更に6%増える見通し。

 清水社長は「海上運賃の高騰は先の見通しが難しいが本業は好調」と強調し、同社が強みを持つ大口径タイヤの供給に優先して取り組む考えを示した。


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