脱落事故防止へ 安全自動車が精度チェックと省力化機器を提案

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カテゴリー: ニュース

 大型車の車輪脱落事故件数が増加の一途をたどる中、安全自動車(中谷宗平社長、東京都港区)は今すぐできる緊急対策として“ホイールナット締め付けトルクの管理”を勧めている。その重要な要素として同社が啓発するのは、定期的なトルクレンチの精度チェックだ。さらにデジタルトルクレンチをはじめとする省力化機器も提案し、正確で効率的な作業への貢献を推進している。同社が行うサービスや整備機器のラインアップについて、営業企画部の鯵坂伸一部長と同部販促企画グループの九石奈映主任に聞いた。

精度チェックと省力化機器を提案

九石主任(左)と鯵坂部長(右)
九石主任(左)と鯵坂部長(右)

 大型車の車輪脱落事故を防止するため、日常点検にホイールナットやボルトの項目が追加され、3カ月ごとの定期点検で規定トルクによるナットの締め付けが明確化されたのは10年以上前にさかのぼる。安全自動車では同時期から締め付けトルクを重要視し、トルクレンチの精度をチェックする必要性について啓発してきたそうだ。

 営業企画部の鯵坂伸一部長は「車輪の脱落事故はナットがきちんと締まっていなかったり、締め過ぎによってボルトが折れたりすることで発生する。そもそもトルクレンチが正しい精度でなければ当然ナットは緩みもするし、締め過ぎにもつながる」と指摘する。

トルクレンチチェッカー
トルクレンチチェッカー

 トルクレンチのチェック間隔は法制化されていないものの、同社によると「作りの性質上、ぶつけたり落としたりするだけで精度が落ちてしまうこともあるため、こまめなチェックが必要になる。半年に1回から、長ければ1年に1回は確認した方が良い」そうだ。

 そのため安全自動車では、全国24の支店や営業所が乗用車用と大型車用のトルクレンチチェッカーを持ち回りで運用する体制を整え、営業先から要請があればもちろん、同社からも積極的に声掛けし、トルクレンチのチェックを実施してきた。異常がある機器が見つかればメーカーの修理につなげ、希望により校正証明書の発行にも応じている。

東日製作所の「TWMS」
東日製作所の「TWMS」

 トルクレンチのチェックの啓発と合わせ、同社が取り組んできたのはタイヤ交換などで活躍する省力化機器の提案だ。

 東日製作所の増力装置付きシグナル式トルクレンチ「TW2」は、安全自動車が提供する省力化機器の1つ。「TW2」では、通常は2人がかりの締め付け作業を1人で実施することができる。

 また、近年では製品のデジタル化も進む。東日製作所の大型車ホイールナット締め付け管理システム「TWMS」では、タイヤ交換時の締め付けトルクデータと、50~100km走行後の増し締めトルクデータを車両ごとに管理することが可能だ。手持ちの「TW2」に、タブレットなどで構成された「TWMS―KIT」を組み合わせることで「TWMS」として使用することもできる。

 「TWMS」の特徴は、ナットの締め付けトルクを管理用ソフトウェアに無線送信できる点にある。また、車軸数やタイヤ(ダブル・シングル)、締め付けボルト数などはソフトウェアで容易に設定が可能。さらに、締め付け結果をタブレット上で色分けして表示するなど作業の正確性にも貢献する。

 また安全自動車は、京都機械工具(KTC)のTRASAS(トレサス)シリーズも取り扱っている。同シリーズでは、既に保有する工具をデジタルトルクレンチにすることができる「TORQULE」(トルクル)などをラインアップする。

 この「トルクル」を使用して締め付け作業を行うと、従来の作業工程を変えることなく、専用アプリをインストールしたスマートフォンやタブレットで測定値の結果表示やデータ管理が可能だ。データ記録の自動化によって作業品質の向上や時間短縮が期待できる。

KTCの「トルクル」活用例
KTCの「トルクル」活用例

 東日製作所とKTCの各デジタル機器はデータ管理を行うシステムがそれぞれ異なるものの、どちらも締め付けトルク値のデータを自動で記録するなど作業者の負担軽減に寄与する点は同様だ。鯵坂部長は「仕事上でミスや不具合があればチェック機構を設けなければならず、作業が一手間も二手間も増えてしまう。作業者への負荷を考えると、機器による効率化は必要だ」と、デジタル化の意義を話していた。

 効率という面だけではなく、“システム上で作業の記録を残すことができる”というメリットもあり、営業企画部販促企画グループの九石奈映主任は「社内のコンプライアンスを高め、リスク回避のためにもなる」と紹介する。

 その他、安全自動車は日本自動車機械工具協会(機工協)が認定するナットランナーもラインアップしている。同商品であれば、トルクレンチによる締め付け作業が不要だ。これらの認定品は車検機器と同様に年1回の校正が必要だが、安全自動車ではそのアフターフォローも行っている。

 今後も安全自動車では、作業者の負担軽減に寄与する省力化機器のラインアップと、整備機器の精度チェックの啓発に粘り強く取り組んでいくという。鯵坂部長は「人の感覚ではなくトルクレンチチェッカーなど道具を基準とし、まずはしっかりと機器の精度を認識して頂きたい。“正しい計測には機器のチェックや校正が重要”と訴え続けていく」と意欲を述べていた。

定期的なメンテナンスを訴求

 安全自動車では、ホイールナットの締め付けに関連した啓発活動と合わせ、タイヤゲージの定期的なチェックも推進している。同製品も落としたりぶつけたりしてしまうと、計測に狂いが生じてしまうためだ。

 鯵坂部長は「まずはご自身がお持ちの機器の精度が正しいかどうかを理解して頂くことが重要だ。正しくないものを正しいと思い込むことがないようにしっかりと機器の状態を把握して頂きたい」と呼び掛けている。

 同社はトルクレンチやタイヤゲージのチェックをはじめ、車検機器やリフト、タイヤチェンジャーなど様々な車両整備機器の定期的なメンテナンスを紹介する冊子も展開している。こうしたツールを活用しながら、整備機器の不具合が見過ごされることがないようメンテナンスの提案を推進していく考えだ。


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