横浜ゴム、トーヨータイヤが新中計発表 成長分野へ資源集中

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カテゴリー: ニュース

 横浜ゴムとトーヨータイヤが2月に会見を行い、2021年にスタートする新たな中期経営計画を発表した。横浜ゴムは高付加価値商品の拡販に注力するとともに、デジタル化を強力に推進する。トーヨータイヤは従来から強みを持つカテゴリーでポジショニングを盤石なものにして次の成長につなげる方針を鮮明にした。

横浜ゴム 強みの深化と新たな価値の探索

山石社長
山石社長

 横浜ゴムは2月19日の会見で2023年度までの新中期経営計画「ヨコハマ・トランスフォーメーション2023(YX2023)」を発表した。最終年度に過去最高の売上収益7000億円と、事業利益700億円の達成を目指す。

 山石昌孝社長は「YX2023は既存事業の“深化”と、100年に一度の大変革期の市場変化を取り込み、“探索”を推進する」と意気込む。次世代の成長に向けた“変革”を成し遂げ、25年度には売上収益7700億円、事業利益800億円を目標に掲げた。

 現在タイヤ市場は、消費財と生産財の規模がおよそ半々となっているが、「CASEやMaaS、DX(デジタルトランスフォーメーション)が浸透するにつれ個人所有の車が減少し、人やモノの移動を支えるインフラ車両が増加する」(山石社長)と予測。消費財タイヤの生産財化が進むシナリオを想定する。

 これを受け、消費財ではアドバン、ジオランダー、ウィンタータイヤといった高付加価値商品の販売比率を19年度の40%から23年度には50%超まで高める目標を掲げた。新車装着や補修用販売の強化、サイズラインアップ拡充のほか、日本ではスタッドレスを拡販するなど地域特性に合った戦略を展開する。

 生産財では、市場変化を背景に新たな価値を探索。まず、乗用車用の印工場をコスト競争力に優れた拠点と位置付け、低コストモデルの確立を目指す。トラック・バス用のタイ工場も同モデルによる増産を検討する。

 また、サービスカーの導入拡大といったサービス体制の強化に加え、タイヤのデジタル化による情報サービスを加速する。さらに、自動運転化など物流の変化により様々なタイヤが求められると想定し、トラック・バス用からソリッドタイヤまで幅広い品種の拡充を進める。ATGなどOHT事業は増産投資も行い、25年度には売上収益1400億円と、全体利益の3割を占める事業に育てる。

 3年の中計期間で、増産やミックス改善、M&Aといった戦略投資に1000億円を投じる計画だ。そのほか、管理職層のジョブ型配置など人事制度の変革に取り組むほか、2030年に再生可能原料・リサイクル原料の使用率30%以上を目指す方針。

トーヨータイヤ 重点商品拡販で高利益率へ

 TOYO TIRE(トーヨータイヤ)は2月25日、2025年を最終年度とする5カ年の中期経営計画を発表した。新たな中計では、大口径タイヤや高性能タイヤなど強みを持つカテゴリーを更に磨き上げ、高い営業利益率を維持していく方針を掲げた。

清水社長
清水社長

 会見で清水隆史社長は、「今回の中計は量を追う拡大ではなく、質の成長を志向するものだ。持てるものをフルに活用し、新しい変化を取り入れ基盤を底上げする。独自の強みを常に生み出せる企業にしていきたい」と話した。

 新中計では25年12月期の連結営業利益を600億円、営業利益率は20年実績を3.2ポイント上回る14%を目標に掲げた。また、これらの目標達成に不可欠な利益率の高い商品や基幹モデル、差別化商品などのタイヤカテゴリーを「重点商品」と位置付け、5年後に販売量全体の55%に引き上げる方針も明らかにした。

 清水社長は「ライトトラック用タイヤやSUV向けタイヤ、オールシーズンタイヤなど当社の強みがあるカテゴリーへ投資を行い、利益率を高める。独自の重点商品により、計画達成に満を持して挑戦していく」と意欲を述べた。

 中心となるのは北米市場での拡販だ。高いブランド力を持つライトトラック用タイヤで販売を加速し、トラック・バス用、オールシーズンなどの需要開拓にも取り組む計画で、北米での販売シェアは現在の7位から5位へとポジションアップを目指す。生産面でも来年稼働するセルビア工場では、年産500万本のうち、200万本を北米へ振り分けるなど、北米市場向けの供給をより強固な体制にする。

 一方、欧州や日本、アジアでもそれぞれの市場に合った商品展開を強化する。欧州ではスポーツ向けなど最高水準の技術を搭載したタイヤを投入するほか、日本ではデジタルを活用した営業体制の高度化を進めながらSUV用タイヤなどで顧客嗜好をこれまで以上に分析して市場を開拓していく。さらに、アジアでは地域ごとの特性を攻略し、販売網を拡充してブランドポジションの向上を図る方針だ。

 また、新車用タイヤではタイヤと自動車部品の両事業を連携させ、サプライヤーとしての優位性を確立するほか、販路拡大やブランド力向上といった市販用タイヤ事業への波及効果を見据えて収益力を高めていく。

 5年間の設備投資額は総額1940億円を予定しており、経営基盤を強化するデジタル関連への投資や将来に向けたソリューションビジネスのプラットフォーム構築を図る考えだ。なお、資本業務提携した三菱商事とのビジネスでは、国内での増販などで100億円の提携効果を見込む。


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