タイヤ脱落事故の防止へ向けて タイヤメーカー各社が対策

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カテゴリー: ニュース

 大型車の車輪脱落事故は近年増加傾向にあり、国土交通省によると2019年度は前年度比31件増の112件だった。事故の早期減少に向け、同省は昨年10月、規定トルクでの締め付けといったポイントを緊急対策にまとめ、これを大型車ユーザーやタイヤ販売店に周知するよう多数の関係団体やタイヤメーカーに呼び掛けた。本紙では1月までにタイヤメーカー国内4社に対し、緊急対策を受けて実施した取り組みをアンケートで聞いた。

 国交省がタイヤメーカーに対し、タイヤ販売店に周知するよう伝えた注意事項は、1つ目がインパクトレンチでの締め過ぎに注意し、最後に規定トルクで締め付けることだ。さらに、正しいボルトとナットの使用や、ユーザーに事故防止の4ポイントを啓発すること、著しく錆びたボルトやナットは交換が必要であると理解してもらうこと、同省がまとめた「タイヤ交換作業管理表」に沿って作業し、報告するよう努めることなど5点にまとめている。

 ブリヂストンは、文書の通達やダイレクトメールで注意事項を伝えた。TOYO TIRE(トーヨータイヤ)はJATMAのポスターも活用し、住友ゴムは資料を持参して啓発に取り組む。横浜ゴムは標準作業の徹底や、「点検時にナットの締め付けを確認するよう改めて要請した」という。

サービス技能コンテスト全国大会の様子
各社はコンテストなどを通じて技能向上に取り組んでいる

 現場に求めている具体的な作業を聞くと、ナットの締め付け時には「複数回に分けて締め付け、最後に規定トルク値で確実に締め付ける」(ブリヂストン)、「トルクレンチ使用時に2人作業を徹底」(横浜ゴム)のほか、住友ゴムではマグネットで作業位置を“見える化”するなど「本締めや締め忘れ防止のルールを設定」しているという。

 「ナットへのマーキング」も多く、ナットに装着すると緩みがひと目で分かる「『インジケーター』の提案」(住友ゴム)もあがった。また、各社は「作業報告書の記録・保管」、「増し締めの啓発」も回答。さらにブリヂストンでは、「緊急対策にある『タイヤ交換作業管理表』の記載内容(清掃・点検・油脂類塗布)の実施」なども要請している。

 また、適正作業に向けた活動については、「当社の作業標準を直営店やブリヂストンタイヤショップに展開した」(ブリヂストン)などと、各社で作業マニュアルの充実や徹底の声があがった。トーヨータイヤは「サービスマン研修を年2回行い、作業の標準化や交換作業の技術力向上に取り組んでいる」と回答した。

 技能コンテストを実施して作業品質の向上を目指す声も多かったほか、住友ゴムでは社内で「大型車両作業の認定試験を導入」しているという。

 今後の方針に関しては、作業マニュアルの更新・徹底や作業コンテストの継続があがったほか、横浜ゴムは「定期的な点検活動を徹底」し、自社のタイヤ管理システムの活用を促進する。

 一方、運送業者に対しては、「異常部品の交換を提案し、増し締めを含む日常点検の啓発を継続」(ブリヂストン)、「増し締め来店を促進する案内方法を検討中」(住友ゴム)という。さらに、住友ゴムは「日常点検の大切さを理解してもらうため講習会を実施」し、トーヨータイヤでは「リモートも検討しながら安全研修会を推進する」という。

 車輪脱落事故は2004年度(87件)から一旦は減少傾向になったものの、近年は再び増加の一途をたどる。今一度、適正な作業の実施に向けて業界全体で意識を新たにしたい。 

自家整備への適切な指導も

ISOホイール
ガイドの使用も有効に

 国交省による2019年度の脱落事故調査では、タイヤ脱着作業を大型車ユーザーが実施したケース(57件)が最多だった。首都圏のタイヤ販売店は「近年、運送会社の統合が進み、自家整備するケースが増えている。タイヤメーカーは自家整備にも指導を入れてほしい」と話す。

 一方、タイヤ業者等では26件発生しており、「出張作業などは暗い中で時間に追われることもあり得る」とコメント。こうした場合も、店と同様にしっかりと作業しなければ事故に繋がってしまうと危機感を示した。

 また、2019年までの5年間の脱落事故をナットの締め付け方向別にみると、左側車輪・右ねじが63%を占めた。首都圏のタイヤ販売業者では、ISOホイールの作業に「ISOホイールガイド」を用いて確実に取り付けているというが、「自家整備ではあまり利用されていないのでは」と指摘する。

 国交省の担当者は「車齢から考えるとISO方式の事故件数が多いのは当然」として、「事故原因を分析すると不適切な作業が約4割を占めている。注意する点は、これまでも周知している4つのポイントをいかに浸透させるかだ」とコメントした。


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