存在感示せるか――ラインアップが拡大するオールシーズンタイヤ

 国内市場で乗用車用オールシーズンタイヤの投入が活発化している。オールシーズンは降雪の際のドライバーの安全面、履き替えが不要という利便性などから徐々にユーザーへ認知が広がってきたものの、普及率が9割を超えるとされる北米、あるいはここ数年需要が急拡大している欧州などと比べると国内でのシェアはわずかに留まる。だが、それは市場の中で需要を掘り起こし、ビジネスに繋がっていく好機と捉えることができるかもしれない。

オールシーズンタイヤイメージ
この数年で急速にラインアップが拡大しているオールシーズンタイヤ

 「北米市場では当初は売れなかったが、ようやく市場が反応を示してきた。新しいマーケットを開拓できる商品として注力していきたい」――TOYO TIRE(トーヨータイヤ)の清水隆史社長はこう力を込めてオールシーズンタイヤの重要性を話す。

トーヨータイヤの清水社長
トーヨータイヤの清水社長

 同社は昨年8月に欧米で実績を重ねた「CELSIUS」(セルシアス)を国内市場に投入。発売初年度でユーザーの動向に手探りの面もあるが、「国内メーカーはスタッドレスしかない中、先手を打っていく。どうせやるなら我々が先行できれば面白い」(清水社長)。競合他社に先駆ける――これが戦略の軸となる。

 一方で、今年1月から「BluEarth(ブルーアース)-4S AW21」の本格販売をスタートした横浜ゴム。2017年に2010年比で需要が5倍に急増した欧州を例に挙げ、「世界的に見ても珍しいくらいブームがある。この機運が日本に来るのではないか」と入念に投入の機会を探っていた。

 同社の調査ではオールシーズンタイヤは国内でも需要の兆しが見えており、積雪路を走行する機会が少ない関東以西のドライバーの半数以上が関心を示しているという。

 同社は2018年11月から都内の一部店舗でテスト販売を実施。合わせて販売店にオールシーズンタイヤの必要性をヒアリングしたところ、「スタッドレスタイヤを必要としないお客様に勧めたい」「スタッドレスタイヤとの売り分けは可能」といった回答が聞かれた。販売の現場でも有効性が確認できたことから「消費者にも販売店にもポジティブな商品」として全国展開を決めた。

日本グッドイヤーの金原社長
日本グッドイヤーの金原社長

 こうした国内勢を迎えるのが早くから日本市場でオールシーズンタイヤを積極的に訴求してきた日本グッドイヤーだ。金原雄次郎社長は「各社が商品を発売し、オールシーズンタイヤを取り巻く環境は様変わりした」と話し、「消費者の認知度も上がってきており、当社には大きな追い風になる」と自信を示す。

 国内でオールシーズンタイヤが装着されている割合は現状では1%未満と見られるが、将来的には、使用環境が日本と似ている欧州と同程度の10%レベルまで高まるとの予測もある。金原社長は「これから市場はどんどん大きくなっていくだろう」と期待感を述べ、トーヨータイヤの清水社長は、「販売を継続していけば、どこかで着火点が来た時に乗り遅れることはない」と将来を見通す。

 ただ、性能の違いやメリットをどこまで確実に伝えていけるのか、普及への課題も残る。2年前からオールシーズンタイヤの国内展開を始めた日本ミシュランタイヤは「今はまだ市場へ認知させる段階だが、その先には競争がある」と指摘する。成熟市場の中で、数少ない伸びしろがあるカテゴリー――オールシーズンタイヤを巡り、各社の陣取り合戦はこれから加速していきそうだ。

関連:試乗レポート ①日本グッドイヤー ②トーヨータイヤ ③横浜ゴム


[PR]

[PR]

【関連記事】