連載「横浜ゴムのタイヤ勉強会」①「シリカ」が実現する効果

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カテゴリー: ニュース

 横浜ゴムはこのほど、神奈川県の平塚製造所で報道陣向けにタイヤ技術勉強会を開催した。タイヤの性能を左右する要素は様々あるが、その中で配合剤「シリカ」と、「吸音材技術」の役割や重要性を2回に分けて紹介する。

シリカ
シリカ

 コンパウンドに配合されるシリカにはゴムを補強する役割があるが、同じくゴムの強度向上のために使用されるカーボンブラックをシリカに置き換えると、転がり性能を向上させることも可能だ。

 転がり性能の差は、両材料の分散構造の違いに由来する。カーボンはカーボン粒子がつながった構造のため、変形時に粒子同士が擦れてエネルギーをロスしてしまう。一方、シリカ粒子の塊である凝集塊が点在する構造のシリカは、その塊を細かく分散させるほどエネルギーロスも少なくなる。

 またシミュレーションでは、シリカ配合ゴムはカーボン配合ゴムに比べて接触面積が1.23倍。凝集塊が点在するシリカの方が路面の凹凸により多く接触でき、シリカの配合量が増えるほどウェット制動性能も向上する。

 こうしたことから、研究先行開発本部材料機能研究室研究室長の網野直也氏は、「小さいシリカ粒子をタイヤの中に分散して配合することができる技術が重要」と話す。

 ただ、カーボンは親油性が高く、ゴムとよく馴染む一方、親水性のシリカはゴムに混ぜ合わせることが非常に難しい。そのため、シリカの配合量を増やすには高度な技術が必要になる。

 こうした課題に応える技術の一つが、強制的にシリカとゴムを結合させるシランカップリング剤だ――一つの分子が、シリカと反応する部位と、ゴムと反応する硫黄からなる。タイヤ製造の混合工程でシリカとシランカップリング剤を化学反応させ、加硫時にゴムとシランカップリング剤の硫黄が反応する。

網野直也氏
網野直也氏

 ただ、混合中に温度が上昇し過ぎると、加硫時に起こしたい硫黄とゴムの反応が発生して、ゴムが固く加工できなくなってしまう。したがって、温度と時間を精密に制御する高い混合技術も求められる。

 さらに、シリカをゴム内へ均一に分散させる分散剤も活用。転がり性能やウェット性能の向上といったシリカの効果を高めることに貢献している。

 研究開発はこれだけではない。種類の異なるシリカの分散性を大型放射光施設「SPring-8」のX線で調べたり、東工大のスーパーコンピューター「TSUBAME」を利用し、シリカの分散状態が異なるゴムのモデルを仮想実験で変形させ、物性を測定したりするなど、解析技術の活用も進めている。

 横浜ゴムは2月時点、国内ラベリング制度でウェットグリップ性能の最高グレード「a」の取得サイズが350を超える。こうした高性能タイヤには、同社のシリカ配合技術の進化が欠かせない。

関連:連載「横浜ゴムのタイヤ勉強会」②「空洞共鳴音」を低減する意味


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