グローバル市場で変革迫られる中国のタイヤメーカー

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カテゴリー: ニュース

 激化する米中貿易摩擦によって中国のタイヤメーカーが事業戦略の変更を迫られている。輸出分に関税が上乗せされるほか、予定していた生産拠点の計画を撤回するメーカーも出てきている一方で、新たなビジネスに向けた動きも活発化している。8月に上海で開かれたタイヤ展示会に参加したメーカーの取り組みを取材した。

 反ダンピング関税の施行や米中貿易摩擦の激化により、中国メーカーを取り巻く環境は先行き不透明な状態が続いている。米国は10月にタイヤを含む中国製品に課す制裁関税を現在の25%から30%に引き上げると発表している。対象となるのは、昨年7~9月に発動した第1~3弾の制裁関税が課せられた計2500億ドル(約27兆円)相当の中国製品。タイヤを含む第3弾は昨年9月の発動時に税率10%だったが、今年5月には25%へ引き上げられている。

 こうした逆風は低価格を武器に攻勢を強めてきた中国メーカーのビジネス戦略に影響を与えている。トライアングルは2017年、米ノースカロライナ州に中国国外初の乗用車用タイヤと商用タイヤの工場を建設すると発表していたが、計画を中断した。

 ワンダも米国を候補地としてタイヤ工場の建設を検討していたが、「改めて調査を進める」(同社の担当者)と慎重な姿勢を示す。同社の新工場はアジア地区が有望で、工場内に先進技術を導入することも検討している。

 一方で、新たな販路として「一帯一路」構想の関連国に大きな期待が寄せられている。これは中国主導の経済圏構想で2013年に習近平国家主席が提唱した。参加国は2018年だけで67カ国が加わり、3月の時点で152カ国に達した。さらにイタリアが主要7カ国のメンバーで初めて覚書に署名するなど、その勢いは衰えない。

 中国メーカーが「一帯一路」にフォーカスするメリットとして、ダブルスター海外部ゼネラルマネージャーのリィン・ダァン氏は「参加国で展示会を開催する場合などに政府から支援を受けることができる」と説明する。ダブルスターはロシア市場向けにトラック用と乗用車用の冬用タイヤを新たに開発。ワンリも関連国の売上が増加傾向にある。トライアングルのセールスエグゼクティブのトーマス・ガオ氏は、「一帯一路はターゲットエリアのひとつとして注目している」と話す。

 将来、「一帯一路」構想の参加国が追加された場合、市場は一層広がり、各社のビジネスの展開はさらに加速していく。

中国メーカーイメージ写真
ダブルスターのタイヤ

 一方、中国メーカーの中で、その動向がグローバルにも大きなインパクトを与えるのはダブルスターだろう。同社は2018年7月に韓国のクムホタイヤの株式の45%を取得して筆頭株主となった。2018年の2社の売上高を合わせると32億9760万ドル(約3525億円)となり、単純計算すると中国最大手の中策ゴムグループに次ぐ2位へと浮上する。

 現在、両社はそれぞれのオペレーションのもと、独立した形で営業を行っている。製造も分かれおり、ダブルスターが中国に3カ所、クムホタイヤが世界に8カ所のタイヤ工場を有する。

 年間の生産能力は、ダブルスターの乗用車用タイヤが2000万本、トラック・バス用タイヤが600万本。クムホタイヤは乗用車用が5000万本。ダブルスターはトラック・バス用タイヤを、クムホタイヤは乗用車用を得意としていることがこの数字からも分かる。

 ダブルスターのダァン氏が「乗用車用タイヤの技術もレベルアップしていきたい」と話すように、両セグメントの強化こそ買収の大きな目的だ。

 ダブルスターは、これまでにクムホのコスト削減をサポートしたほか、ダブルスターの4500以上の小売店を活用するなど販売面でも大きく貢献してきたという。今後、両社の強みが上手く融合できれば、グローバル市場で競合メーカーにとって脅威ともなりそうだ。


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