TOYO TIREが目指す技術開発の未来――環境への対応、ソリューションを軸に

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カテゴリー: 事業戦略, 特集

欧州の拠点から新たなアプローチも

 ――昨年2月にタイヤセンシング技術コンセプトを発表しましたが、その狙いは。

技術統括部門管掌 守屋学執行役員
技術統括部門管掌 守屋学執行役員

 「今後の自動運転社会を見据えた時に、一つの提案になると考えています。タイヤは路面に唯一接しており、そこから得られるデータは重要です。自動運転では安全性が非常に重要になってきますので、例えば路面状態をドライ、ウェット、アイスなどと瞬時に予測することで、車両の緊急的な制御につながっていくことが可能になります。また、メンテナンスを考えた時に一つの手段として使えないかと研究しています。

タイヤセンシング技術コンセプトで可視化されたシミュレーションによるCG
タイヤセンシング技術コンセプトで可視化されたシミュレーションによるCG

 実用化すれば新しいビジネスにつながる可能性はあります。例えば、危険な場所を走行して何か異常を検知した際にアラートを出す、あるいは残り溝を検知してメンテナンスを行うことが可能性としては出てくると思います。

 カーシェアなどでは利用者自身がタイヤを点検することはありません。多くの車両を管理する会社にとっては『このタイヤはそろそろメンテナンスが必要』などと通知することで、業務の支援にもなるかもしれません」

 ――7月にはトラック・バス用タイヤの使用状態推定モデルを構築し、2023年の実用化を目指しています。

 「トラック車両のデータを取得し、その結果から摩耗の予測式を作成してきましたが、それが大分完成してきました。ある程度実用化への目処が見えてきましたので、今後はデータの精度を上げていくこと、それをどうお客様に使って頂くかが重要になります。

トラック・バス用タイヤのメンテナンス・ソリューションの概念図
トラック・バス用タイヤのメンテナンス・ソリューションの概念図

 他社もソリューションビジネスを始めていますが、当社ではトラックやバスについては特に摩耗が重視されると考えています。現在は目視で溝を確認したり、作業員が手でチェックして『そろそろ交換かな』と確認したりしていますが、この技術によってその管理が簡易にできるようになります。

 また、タイヤはローテーションが必要ですが、最適なタイミングを知らせることもできますし、加速度計を装着すれば、運転方法のアドバイスもできるようになります。

 『このようなシステムがあるなら使用してみたい』というユーザーが増えれば当社にも大きなメリットがあります。トラックやバスを何十台、何百台と所有している会社とお取り引きできれば、タイヤ販売にも貢献できるはずです。

 この技術はもちろん乗用車用タイヤにも応用できますので、将来はレンタカー会社やカーシェアリングの事業者に展開する可能性もあります。クルマに興味を持たれるお客様は少なくなってきており、あくまでも移動手段というケースも増えています。カーシェアの管理会社などへシステムを提案すれば、我々のタイヤとセットで導入するなどビジネスチャンスが拡大できるはずです」

 ――2018年に三菱商事と資本業務提携を締結しましたが、開発面で成果は。

 「三菱商事のお客様とも新しいつながりが出てきています。トラック・バス用タイヤのソリューションビジネスでも三菱商事に協力してもらっていますし、我々としても活用の幅が広がっています。

 技術関連で複数のワーキンググループが進んでいますが、取り組みが上手く行っている部分とそうではない面もあります。今年は新しい中期経営計画を発表する予定ですが、そういった点が反映されるかと思います。

 ただ、新しい計画でも基本的な部分は変わっていませんし、安全や環境への対応、ソリューションビジネスが軸になるのは間違いないです」

 ――R&D(研究開発)拠点では世界3極体制をスタートさせています。

 「2019年秋に稼働したドイツの拠点には分析装置を導入しました。22年4月にはセルビアで新工場を稼働することもあり、欧州のポリマーメーカーなど様々な企業から声を頂く機会が増えてきました。

 今まで使用していない素材なども情報提供を頂いており、コスト面に優れた材料、環境に対応した素材など思った以上に反響があります。新しい材料を活用することで技術革新や性能向上、環境により優れた製品づくりに貢献していけると思います。

 北米のR&Dでは現地向けの商品開発を担っており、ジョージア工場で生産するようなタイヤは現地で開発しています。北米は単に性能が良ければいいのではなく、嗜好性が求められ、デザインによって売れ行きが変わってくることもあります。マーケティングも含めて特に顧客情報が重要です。現地でディーラーを回ってニーズを集めて開発し、それがヒット商品につながるという流れが上手くいっていると思います。

 一方で今後、欧州で培った安全性や環境性に関する技術を北米や日本に持ち込んでいきます。そういった意味からもグローバル3カ所のR&D拠点はしっかりと連携していく必要があります」

 ――技術開発の展望を。

 「やはり日米欧のR&D拠点を連携させることが重要です。欧州では新しい素材も含めて開発が進んでいますので、それをグローバルに展開してより良い性能のタイヤを開発していくことが一番の軸となります。もちろんソリューションビジネスも見据えながら環境面、安全性も含めてお客様に喜んで頂ける商品を開発していきます」


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