日本ミシュランタイヤ社長が語る日本市場の現況と技術革新

全てのタイヤが“コネクテッド”に

 ――ミシュラングループとして今後のタイヤ技術に関する考えは。

 「『100年に一度』と言われる変革期の中で、まずは“CASE”についてお話しします。車両の電動化が進めば、できるだけ長く走行できるように、タイヤには転がり抵抗の低減が求められます。

 また、音への対応も重要です。電気自動車(EV)で時速50~60km以上になると最もノイズが発生するのはタイヤです。さらにEVはトルクが強いため、より耐久性が高いタイヤが求められるようになってきます。

日本ミシュランタイヤのポール・ペリニオ社長
日本ミシュランタイヤのポール・ペリニオ社長

 自動運転、カーシェアリングが普及すれば、パンクせずにダメージに強いタイヤ――タイヤでトラブルが発生しないように、という要求も出てきます」

 「コネクテッドに関しては、我々は既に建設機械や飛行機のタイヤなどで市場展開を行っています。次のチャレンジは農業機械、その次はトラック、そして乗用車、二輪車と進んでいきます。

 ミシュランは数年前にポルシェ向けにコネクテッドタイヤを開発しました。これは『トラック・コネクト』というセンサー入りタイヤシステムですが、恐らく10年以内に全てのタイヤはコネクテッドになるのではないかと考えています。

 『何のために?』と疑問を持つのは当然だと思います。それぞれのセグメントでニーズは異なりますし、乗用車用タイヤなどでは一般消費者とフリート向け、あるいは自動車メーカーで求める内容は変わってくるのではないでしょうか。

 一方、ネットワークはどうすればいいのか、データをどこからどこへ送るのかなど、業界のスタンダードについて現時点で回答は持っていません。ただ、これからの数年で徐々に業界の基準を決めるための動きが進んでいくかもしれません。これは一つのメーカーでできることではないと思いますし、オープンイノベーションが重要になってくると思います」

 「これからのタイヤにはサステナブルも必要になってきます。メーカーの責任として資源をいかにサステナブルなものに転換していくのかが非常に重要なトピックだと思っています。

 ミシュラングループには2つのターゲットがあります。2030年に1km走行するためのエネルギーを2010年比で2割カットする。そして、2050年以降はタイヤに使用する素材は100%サステナブルにするという方針があります。これはタイヤメーカーとして非常に重要な責任だと考えています」

 ――ビジネスのソリューション化が加速していますがミシュランの考えは。

 「ただモノを売るだけの時代は終わっていきます。運送会社でも一般消費者でもタイヤを購入することが目的ではありません。お客様が何の目的で、どのような使い方をして、どういう運転をするのか、これを理解することによってベストなソリューションを提供できるのです。

 安全に低コストで、環境に優しく運行したい――これがニーズなのです。それでは、どうやってそれを実現するか――それこそがミシュランの考えるソリューションです」

 ――2019年にエアレスタイヤ「Uptis Prototype」(アプティス・プロトタイプ)を発表しました。

「Uptis Prototype」(左)と「VISION」
「Uptis Prototype」(左)と「VISION」

 「2017年に『VISION』(ビジョン)コンセプトを発表しましたが、その最初のステップが『アプティス』です。2024年に新車用タイヤとして実用化する予定ですが、2030年、2040年には更なる進化があり、最終的には『VISION』のような形態になるというのがミシュランの考え方です。

 建設機械用タイヤでエアレスタイヤは既に販売していますが、高速域にも対応する乗用車向けということが今回のチャレンジです」

自己満足では「イノベーション」にならない

 ――ミシュランは過去から様々なイノベーションを生み出してきましたが、その背景は。

 「イノベーションはミシュランのDNAですし、イノベーションがなければ成長できません。社員に話を聞きますと、『誇りがあるからイノベーションにつながる』と言うのです。イノベーティブな会社に所属していることは私自身もプライドに感じています。

 重要なことは、ユーザーのためになるかどうか――お客様にとってメリットがなかったら全く意味がない、自己満足ではいけないと思っています」

 ――最後に2020年の展望を。

 「日本市場に目を向けますと、エンドユーザーのために色々なセグメントで新商品を発表したいと思っています。また、引き続き自動車メーカーの変化に対してサポートを強化したいと思います。ミシュランガイドも新しいエリアが加わることになりそうです。

 そして、最も重要なのはユーザーのためにこれからも成長していかなければなりません」


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