グッドイヤー、メンテナンス予測サービスで安全性と利便性に貢献

シェア:
カテゴリー: タイヤ事業戦略, 特集

 グッドイヤーはフリート事業者向けにメンテナンス予測サービスを提供している。サービスの対象は生産財のみならず、近年は電気自動車や自動運転車といった次世代モビリティにも対応し、関連するデジタルソリューションの実験も推進する。こうした事業を展開する背景には何があるのか、また、サービスの革新は将来のタイヤ業界にどのような可能性をもたらすのか――。日本グッドイヤーマーケティング本部本部長の有田俊介氏と、マーケティング本部プロダクトマーケティング部長の岸宗弘氏に話を聞いた。

消費者ニーズを迅速に共有

 グッドイヤーが欧米で展開するフリート向けのメンテナンス予測サービスは、タイヤの空気圧や温度を計測するワイヤレスセンサー、計測データを基に交換時期などを計算・予測するクラウドベースのプラットフォーム、ユーザーがメンテナンススケジュールといった情報を閲覧できるアプリケーションから主に構成される。

マーケティング本部の有田本部長
マーケティング本部の有田本部長

 2017年には、自動車産業向けの測定装置を提供する独ベンテック・システムズ社を買収。同社のシステムは路面に設置するもので、センサーなどによってタイヤの空気圧や残溝の検査を短時間で実施できる。

 欧州では、こうした技術を活用して、燃料効率の最大化やタイヤ関連の事故の抑制が期待できるトラック事業者向けの「グッドイヤー・プロアクティブ・ソリューション事業」を設立した。

 最近は、欧米を中心に乗用車も対象に加えたトライアルサービスを開始している。今年に限っても、米エンボイ・テクノロジーズ社など電気自動車のフリート事業者に対する試験的なメンテナンス予測サービスを2件発表。また、2月には米国を中心に運行している自動運転のシャトルバス「Olli」(オリー)にタイヤを独占供給すると公表した。

 自動車業界では、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の技術革新が進む。マーケティング本部の有田本部長は、「こうしたメガトレンドによって個人需要は所有から使用にどんどん変わっている。実際の需要はフリート向けに移っていき、特に欧米を中心に実需化しはじめている」と、フリート向けサービスを展開する背景を説明する。

自動運転車の「オリー」
自動運転車の「オリー」

 さらに、自動運転車の「オリー」は「第三者のお客様に乗車頂いて実際に運用されている。こうした自動運転技術に供するために、どういった情報が必要なのか調査を行っている」という。

 同車両は、グッドイヤーが参画する米ミシガン大学主導の官民研究機関「Mcity」(エムシティ)でも活用できる。エムシティは市街地や郊外の道路環境を再現した走行実験施設で、次世代モビリティに関する実証実験が可能だ。

 様々なトライアルを通じて、タイヤのメンテナンスサービスのみならず、車両や道路を含む多様な情報を活用した新サービスへ参加することが今後の目標となる。

 国内でも自動運転やシェアリングに関心が集まっており、今後はタイヤのビジネスが変わっていく可能性もある。有田氏は「シェアリングが増えていることは確かなので、そこに対してのチャネル戦略は確実に必要になっていく」と語る。

マーケティング本部の岸プロダクトマーケティング部長
マーケティング本部の岸プロダクトマーケティング部長

 また、シェアリングサービスでは対人のやり取りをすることなく車両を借用し、返却できる。そのため、利用した車両に不具合があっても報告されないケースがあり得る。

 こうした点を踏まえると、タイヤのセンサーや路上の計測システムといった自動的に点検を行うことができるサービスは、今後ニーズが増していくビジネス領域であると考えられる。

 さらに、残溝のチェックは安全啓発活動でありつつ、タイヤの持続的な交換サイクルを作り出す。フリート向けの様々なサービスは、車両の所有者や利用者の安全性、利便性を確保するだけではなく、タイヤ業界にとって新しい需要創出につながる可能性があるといえるだろう。

 また、グッドイヤーが有するメンテナス関連のシステムは一般消費者に対しても展開が可能だ。例えば、残溝の計測システムがショップの駐車場に設置されていれば、仕組み上は誰でも自動で点検を受けることができる。

 現時点では、日本グッドイヤーは国内でこうしたサービスの実需を調査している段階だという。マーケティング本部の岸プロダクトマーケティング部長は「オールシーズンタイヤを冬用タイヤとして使える溝の限界が5割なので、溝を自動的に計測できるという点は有用かもしれない。経済性や安全性にも消費者の関心はあると思うが、当社の技術をどう生かしていくのかはこれからの課題」と話した。

 グッドイヤーの計測システムやワイヤレスセンサーからは、タイヤ関連の“ビッグデータ”が取得可能だ。岸氏は、こうした情報の活用について次のように話す。

EVシェアリング企業の米エンボイ・テクノロジーズ社は、メンテナンスサービスで休止時間の最小化を図る
EVシェアリング企業の米エンボイ・テクノロジーズ社は、メンテナンスサービスで休止時間の最小化を図る

 「摩耗のデータは取得に手間が掛かるが、当社のシステムにより連続的に計測できる。また、走行中のタイヤの熱も耐久性に影響するため、どういう条件で走っている時にどのくらいの熱が発生するのかという情報も開発の参考になるだろう」

 走行時のデータを蓄積すれば、将来的には使用する地域に合わせたタイヤの開発をより効率的に行うことができる。現在のところ、タイヤ点検に関するデジタルサービスは欧米のみで展開されているが、先進国に比べて道路事情などの使用条件が厳しい地域でデータを蓄積できれば、開発上、有益な情報となる。

 現在グッドイヤーがグローバルで推進するのは、メーカーから代理店、小売店といった取り引き先を含めて商流全体がつながる“コネクテッドビジネスモデル”だ。これによって、一般消費者に最も近い所からニーズに関わる情報を迅速に共有し、それに対応した提案を行う体制を目指している。

 フリート向けのデジタルサービスも顧客、消費者の需要を速やかに捉えようとする流れの中に位置付けられる技術であって、単体で展開するものではない。

 日本グッドイヤーでも、こうしたビジネスモデルの必要性や需要が確認できれば、海外で展開するシステムを取り入れる方針だ。グッドイヤーがグローバルで消費者を中心とした商品・サービスの展開を図る中、国内でも先進的な取り組みがスタートする日は近いかもしれない。


[PR]

[PR]

【関連記事】