ミシュランのトップが語る「変化し続けることの価値」

 仏ミシュランはモビリティ社会の変革期を見据えた技術開発を加速する。フロラン・メネゴーCEOは、「時代に合わせて変化し続けることが重要となる」と述べ、ソリューションビジネスへの移行など新たな価値創造によりライバルメーカーとの差別化を図っていく考えを示す。さらに「CASE」(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)や「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)の普及に向けて、M&A(合併・買収)も積極的に検討することで事業領域の拡大につなげる方針だ。同社が6月にカナダで開催したグローバルサミット「Movin’On」(ムービング・オン)で、メネゴーCEOをはじめ、スコット・クラーク執行副社長、セルジュ・ラフォン執行副社長が本紙などの取材に応じ、足元の事業環境や今後の施策を語った。

環境変化はチャンスに

 モビリティの発展により、将来的にはクルマ自体が所有から利用へとシフトしていくことが確実視されている。それに伴い需要構造やタイヤビジネスのあり方も変わり、収益の低下を懸念する指摘も少なくない。

フロラン・メネゴーCEO
フロラン・メネゴーCEO

 こうした中、メネゴーCEOは「我々は市場を失うことを中心に考える会社ではない」と強調する。その上で、「ジャンドミニク・スナール前CEOは多くの変化をリードしてきたが、私もそれを引き継ぐ。ミシュランが存続するために変化し続ける」と、技術革新によって市場を開拓していくことの重要性を述べた。

 乗用車・商用車ビジネスを担当するクラーク副社長も「イノベーションとテクノロジーに対する投資でリーダーシップを発揮する」と語る。

 グローバルでは新興国メーカーの存在感が増して競争が激化する中、他社といかに差別化を図り、顧客の価値につなげていくかが重要なテーマとなる。特に重要性が高まってくるのはコネクテッド技術を活用したソリューションビジネスだという。クラーク氏は「効率性が顧客の満足度を左右する。我々は商用車だけではなく、米ウーバーテクノロジーズといった企業にもサービスを提供できる」と述べ、「モビリティの進化は脅威ではなくチャンスだ」と自信を示した。

M&Aを積極化

スコット・クラーク執行副社長(左)とセルジュ・ラフォン執行副社長
スコット・クラーク執行副社長(左)とセルジュ・ラフォン執行副社長

 同社はこの数年間、多くの企業買収を進めており、今年5月にもテレマティクスプロバイダー、英マスターノート社の全株式を買収することに合意したばかりだ。フリート関連では2017年にも米国でテレマティクス企業ネクストラック社を買収しており、今後の需要拡大を見込んだ体制を整備している。

 さらに販売網の拡充にも取り組む。昨年1月に米国で住友商事と提携したほか、2月にはインドネシアでタイヤメーカーと小売企業を約480億円で買収。メネゴーCEOが「自社に必要な専門性が無い場合、戦略的に買収を行う」と話すように、成長分野でその勢いが増す中、業界に少なからず衝撃を与えたのは建設・産業車両用タイヤのトップメーカー、加カムソ社の買収だ。

 「OHT(オフハイウェイタイヤ)で第一人者になる」――特殊機械用部門のトップ、ラフォン副社長はその目的をこう語る。農業機械用などOHTカテゴリーは消費財タイヤと比較するとライバルメーカーが少なく、安定的な成長が見込まれている。1600億円を投じた買収がどのようにグループの成長に寄与するか注目が集まってくる。

 また東アジア地区の統括も担うラフォン副社長は日本市場について「高齢化などの影響があり、大きな成長は見込まれない」と話す。一方で、「走りを愉しむユーザーに18インチ以上の高性能タイヤなど、お客様のニーズに合ったソリューションを提案していく」と展望を語った。

関連:ミシュランが見据える未来――「Movin’On 2019」開催


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