オールシーズンタイヤ 国内市場の新たな選択肢へ

日本グッドイヤー ライバルの参入を歓迎 サイズ数の強み生かし差別化へ

有田俊介本部長

 国内のオールシーズンタイヤカテゴリーにおいて、高い知名度を誇る日本グッドイヤーの「Vector4Seasons Hybrid」。同商品は1977年に世界初のオールシーズンタイヤを商品化した米グッドイヤーが、約40年間の開発で蓄積してきたノウハウや知見を結集したモデルだ。

 同社は国内でいち早くオールシーズンタイヤを展開してきたが、2016年に事業成長の柱のひとつとして販売を強化している。サイズラインアップは従来の23サイズから44サイズに倍増させ、新たに「Vector4Seasons Hybrid」として上市した。さらにこれまでの輸入販売から国内生産に切り替えて、供給スピードを高めた。

 マーケティング本部の有田俊介本部長は、「戦略的な優先順位を上げて取り組んできた結果、市場成長率を大幅に上回る販売実績を達成した」とこの2年間の販売状況を振り返る。

 同社は昨年1月、非降雪地帯に居住する400人のドライバーを対象にアンケート調査を行った。それによると、「シーズン毎のタイヤ交換が煩わしい」「タイヤチェーンの装着を経験したことがない」と答えたドライバーはいずれも約半数を占めた。また、1年を通して走行可能なオールシーズンタイヤについて、未使用者のうち約7割が「使ってみたい」と答えた。この調査結果からオールシーズンタイヤに対するニーズが高いことをうかがえるものの、国内市場ではその認知度は高いとはいえず、普及がまだ進んでいないのが現状だ。

「Vector4Seasons Hybrid」

 その中で、同社ではこれまで販売店向けの試乗会を継続的に行ってきたが、昨年末から非降雪エリアのタクシー会社約30社に「Vector4Seasons Hybrid」のモニタリングを実施。プロであるタクシードライバーは安全運転へのこだわりが強いため、オールシーズンタイヤに雪上性能はもちろん、特に高いウェット性能を求めるからだ。

 同社がまとめた中間報告では、ドライ・ウェット路面での高速操縦安定性やコーナリング性能、グリップ力に関して、約9割が「通常のタイヤと同等、もしくはそれ以上にある」と回答した。同様に、スノー路面においても約8割のドライバーから高い評価を得た。プロのドライバーの的確な評価を積み重ねることで、ユーザーのオールシーズンタイヤに対する安心感の向上に繋がることが期待される。

 オールシーズンタイヤについて、今年3月から競合他社も新商品を投入した。

 有田本部長は「他社さんの参入は我々にとってありがたいことだ。オールシーズンタイヤという語彙は少しずつ点が線になり線が面になって認知度を広げれば、新しい需要の創出や活性化にも繋がる」としている。今後、強みであるサイズの豊富さを生かし、競合他社との差別化を図りつつ、さらなるシェア拡大を目指す考えだ。

住友ゴム工業 ファルケンで個性ある商品を

「EUROWINTER HS449」

 住友ゴム工業が「FALKEN」ブランドで販売しているオールシーズンタイヤ「EUROWINTER HS449」。同社は、欧米を中心に高性能タイヤとして評価されるファルケンブランドを国内でも販売強化するため、2015年に一気に5商品を市場に投入した。「EUROWINTER HS449」はその中のひとつだ。

 タイヤ国内リプレイス営業本部販売企画部の有馬翔吾氏は「他社にない、オリジナリティのある商品をファルケンブランドで展開していくとの考えで、国内市場で品目数の少なかったオールシーズンタイヤカテゴリーに着目した」と話す。

 「EUROWINTER HS449」は、ファルケンブランドの特徴である高い高速操縦安定性能と優れたウェット性能を重点において開発した。夏タイヤに近いラウンド形状のプロファイルを取り入れながら、排雪性の高い方向性パターンを採用。トレッドセンター部に太いストレート溝を2本と、左右に細かなラグ溝を数多く配置することで、排水性や雪上ブレーキ性能を向上させた。

 販売サイズは14~18インチの全21サイズとなっており、軽・コンパクトカーからセダン、ミニバンまで応える。なお、同商品は冬タイヤとして認定される証しである欧州の「スノーフレークマーク」と日本の「スノーマーク」を得ており、高速道路の冬タイヤ規制に対応する。

有馬翔吾氏

 販売面ではタイヤセレクトやタイヤランドの直営店以外にカー用品量販店やタイヤ専業店など多くのチャネルで取り扱われている。ただ、売場でオールシーズンタイヤの展示コーナーを設ける店舗が限られていることもあり、夏、冬タイヤ以外にオールシーズンタイヤの選択肢があること自体を知らないユーザーは多いという。

 同社はこれまでカタログや店頭ツールを使って、多様なユーザーニーズに応じた提案を進めてきた。特に冬シーズンに向けて、急な降雪や交通規制などに備えたい非降雪・準降雪地域のユーザーに「ユーロウインター HS449」の特性を分かりやすく伝えている。実際に購入したユーザーから「夏タイヤとほぼ変わらない乗り心地」「高速道路でも快適にドライブすることができた」といった声を得ている。

 季節ごとの履き替えが不要なオールシーズンタイヤは国内では比較的ニッチなカテゴリーであるものの、最近は競合他社も販売に乗り出した。有馬さんは「業界全体にオールシーズンタイヤのトレンドが来ていると感じている。その中で一歩リードする我々の強みを保ちながら、戦っていく。将来的には『オールシーズンタイヤを買うならファルケンだよね』と言って頂けるようなブランドを目指したい」と展望を述べた。

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