被災地の企業ボランティアで注目のブリヂストン

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 こんなに気持ちのある人が大勢いることに、びっくりした。

 東日本大震災の発生から3カ月以上が過ぎ、被災地では企業ボランティアへの注目が高まっている。5月の大型連休中には全国から大勢集まったボランティアの人たちが、その後急速に減少して全く手が足りない現状だという。このため、企業によるボランティア活動に対する期待が増しているというわけだ。

 そこで目を引くのがブリヂストン。現在では名立たる企業が企業ボランティア活動を行っているが、中でも同社の動きは早かった。

 第一陣は4月14日の木曜日、ブリヂストン本社従業員から募った30名ほどの団を結成し被災地、東北に向かった。一行は午後3時頃、京橋の本社前からバスで出発し、その日の夜、宮城県内に確保した宿泊地に入った。翌金曜の朝から活動して土曜の午後3時頃現地を離れ、その夜帰京するという2泊3日の予定を無事こなすことができた。

 隊長を務める室井孝さん(ブランド推進部社会活動課長)は、「(震災直後から)情報を収集して準備はしていたものの、初めてのことだったのでテスト的に実施してみた」という。実際に活動してみて、現地の状況が把握できた。またボランティア活動の効果を確認できたことから、「これはやれる」と判断した。

 第二陣からは募集をグループ会社に広げ、5月12日から3週間分、1チーム30名×3チームの募集に対し参加希望者はすぐに定員オーバーとなり、抽選することに。「こんなに気持ちのある人がいるんだと、正直びっくりした」と本音をのぞかせる。

 参加者は20代半ばから60代の雇用延長の人まで、年齢層は実に幅広い。「人の役に立ちたいという気持ちのある人が大勢潜在していたのが、この企画で顕在化した。気持ちの掘り起こしにつながった」と見ている。

 しかし実際に被災地に入れば、「テレビで見た光景を目のあたりにするわけで、きついものがある。見ているだけでもの悲しくもなる」。それでも参加者した人の約7割が「被災地の状況が理解できて、今後社外の企画でも参加したい」と、また残りの3割も「会社の企画なら参加したい」と前向きだという。

 被災地の復興には少なくとも2~3年かかるだろうと見るのが一般的。この先どうなるのか見通せないのもの事実。そうした状況ではあるが、「必要なときに必要なところに行くこと。とにかく、今できることを黙々とやることが大事だと思う」と語る。

 すでに5チーム(うち岩沼に1回、石巻に4回)、延べ約160人が活動を行った。今後も盆の時期を除き、雪が降ってくる前の11月末まで、月2回ペースで活動を続けることにした。通算16チーム、延べ約500人が参加することになる。

 もちろん参加者の安全面には十分な配慮を忘れない。同社グループの持てるノウハウを十分活用して万全の態勢で臨む。年休などを利用して参加する人たちの仕事に支障がないようにすることも大切な仕事だ。

 世界中の企業支援の窓口として2年間キャリアを積んできた室井さんではあるが、やはり隊長としての責任は重く感じる。だからこそ「普段からNGO、NPOとのつながりを大事にして、社会の公的な目をしっかり意識するようにしている」。

 会社の理解と支援があってこそ実現できるのも企業ボランティア活動。折しも、今年は同社創立80周年。それを記念して新企業理念とブリヂストンシンボルを発表したのは、大地震発生のわずか10日前、3月1日のことだった。企業理念と併せて策定した新タグラインにのせた思想は、〈「一人ひとりが支える」企業でありたい。〉である。――まさしく、企業ボランティアの真髄にぴたりとはまる。


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