価値を積み重ねる。それが立ち位置――三輪タイヤ

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カテゴリー: ディーラー, レポート

 京都市山科区に本社を構える三輪タイヤ。三輪智信社長は30年近く前にタイヤ業界に身を転じた当時、そして今でも「将来への不安はある」と話す。こうした中でもいち早くサービスカーによる出張作業に軸足を移して顧客ニーズを開拓するなど常に先を行く取り組みにより、会社を軌道に乗せてきた。その一方で、「規模の拡大ばかりを追求しても限界がある」と、自身の考え方を見つめ直す出来事もあった。これまでの取り組みと、さらに将来を見据えた戦略を聞いた。

価値を積み重ねる。それが立ち位置

 同社の創業は1972年。三輪社長は1990年に入社した。2003年6月に2代目の社長に就任したが、入社当初から「漠然とした不安感」は持ち続けていたという。当時、拡大していたメーカー直営店には規模の面でとても太刀打ちできない。時には「タイヤ専業店が存在する意味があるのか」とまで思い悩むこともあった。

 一方で従業員やその家族もいる。会社を守らなくてはならない――「強くて大きな相手と正面から勝負しても勝ちようがない。それならば、得意分野で戦う」――そして考え着いた答えが、タイヤサービスカーを活用した出張サービスだ。「お客様のガレージで作業をする場合は看板の大きさは関係ない。技術とやる気さえあれば大丈夫」――そこに光明を見出した。

三輪タイヤ
三輪タイヤの本社

 当時は画期的な発想だった。ユーザーのもとを訪問してタイヤを点検して交換する。レポートとして提出することも忘れない。顧客の予算作成のサポートも行うビジネスは評判となり、業務は拡大していった。

 出張サービスが軌道に乗ったのは京都ならではの地域性もある。同社の主要顧客は物流会社。ただ、他県のように工業団地や港湾地区に集中するのではなく、京都市から郊外に点在しているのが特徴だ。来店を待つよりもサービスカーで出向くスタイルは顧客のニーズに合致した。

 一方で提供できる内容が限られていては意味がない。店舗と同じサービスを、同じ品質で行って初めて同社の優位性が認められる。ユーザーからの引き合いが多くなるにつれ、サービスカーそのものを自社のノウハウを詰め込んだ、使い勝手の良い仕様にカスタマイズする必要があった。

 同社ではサービスカーを自社で開発しているのが他にはあまり例がないユニークな点だ。2005年には関連会社としてサービスカーの開発・製造を行うモビリティープラスを設立し、様々なタイプの車両を生み出してきた。

 「新品タイヤだけではなく、リトレッドやリグルーブも含めて出張でもきちんと対応する。そして預かったタイヤを付加価値を付けて戻す。従来より積載能力を高め、これらの作業をサービスカーを駆使してやらなければならない」――まさしく“移動型店舗”だ。

 三輪社長は「新品だけ、値段だけの商売はしない」と力を込める。ユーザーにとってメリットがあるものを最優先に、泥くさく確実な作業を繰り返すことで信頼を得てきたのだ。

 「自分たちの仕事を付加価値として認めて頂く。そしてサービス品質が高く、必要ならばいつでも来てくれる――顧客にそう認識して頂くことこそが我々タイヤ専業店の立ち位置」

 その後、顧客の拡大に合わせて2009年には滋賀県栗東市にも営業所を開設。サービスカーは2つの営業所を合わせて10数台に増えた。今では出張による販売サービスが売上の7割以上を占めるまでに成長している。

“移動型店舗”の先駆者としてさらに進化

 ただ、全てが順調に進んできたわけではない。2015年には三輪社長の仕事に対するプライドを根本から揺るがす痛ましい出来事があった。

 繁忙期を迎えた年末、従業員が車両を走行中に人身事故を起こしてしまった。三輪社長自身も事情聴取を受け、会社の管理体制が問われるなど、対応に追われた。

 「ユーザーの利便性のためにサービスカーを走らせているのに、人を傷付けてしまった。では何のために会社をやっているんだ」――。

三輪タイヤ集合写真
三輪社長(前列中央)と京都本社の従業員の皆さん

 この苦い経験は大きな転機にもなった。「規模の拡大ばかりを追求しても限界がある。これでは未来永劫繁栄していくことは無理だと神様が言ってくれている」

 現在取り組んでいるのは、従業員が無理なく働き続けられるための環境づくりだ。強みである出張サービスと社員の働きやすさを両立できる仕組みを模索している。

 先駆者としてライバルが追随するようなビジネスモデルを進めてきた三輪社長。「何が正解か答えはない。生の世界でビジネスをしている我々にとって正解は何なのか」と絶えず自問する。

 今後の目標は大きく2つ。カギとなるのはやはりサービスカーだ。近年は出張サービスを手がけるケースは多く、それだけで差別化を図ることは難しくなりつつある。そのような環境下、「ビジネスモデルをブラッシュアップさせていきたい」と意欲を示す。

 その一例が、モビリティープラスがこれまでサービスカーの開発で培ってきたノウハウを活かした車両発電システムだ。トンネル内を検査する車両などに搭載することで様々な可能性を生み出している。

 「最初に言い出して実行する。そういう取り組みを評価して頂けるお客様を掴んでいく戦略にしていきたい」

 もう一点はサービスカー製作の内製化だ。これは同社にとって新たな挑戦となる。既に社員を協力会社に派遣して研修がスタートしている。また栗東営業所の隣接地に特装車の工場を建設する計画も進行中で、2018年夏には竣工する見通しだ。

 大手に比べて規模が小さい分、考え抜いたアイデアをすぐに実行できることは大きな強みとなる。柔軟かつ大胆な発想、そして機動力を武器に生き残りをかける。


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