【ブリヂストン】スマート工場化で競争力強化、新成型機を公開

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カテゴリー: レポート, 現地

 ブリヂストンは昨年12月、彦根工場(滋賀県)に導入した最新のタイヤ成型システム「EXAMATION」(エクサメーション)を報道陣に公開した。同工場は2016年からの5年間で総額約150億円を投じて生産ラインの再構築を進めており、その中核を担うのが「エクサメーション」となる。今後、従来設備からの移管を進め、高精度なタイヤ生産によりグローバルでの競争力向上に繋げる。

成型機に“熟練の技”を搭載

 彦根工場はブリヂストングループのフラッグシップ工場として最新の生産技術を開発し、グローバルに発信する役割を担う。2005年には世界で初めて部材工程から製品検査までを全て自動化し、また生産現場の状況をリアルタイムで把握するためのネットワーク技術を導入した生産システム「BIRD」(バード)を導入。さらに昨年2月には「エクサメーション」による本格生産を始めた。

新型成型機「エクサメーション」の全景
エクサメーションの全景

 「エクサメーション」は、「バード」で培ってきたICT(情報通信技術)を進化させるとともに、材料加工に関する同社の知見や生産工程で得られた情報を解析し、さらに熟練した技能員のノウハウを加えた独自のアルゴリズムを実装させたのが特徴。従来工法では技能員のスキルに依存してきた成型工程における品質保証の判断を、機械が自動的に行うことで高精度なタイヤ生産を実現する。

 また「バード」が「REGNO」(レグノ)や「POTENZA」(ポテンザ)など高性能タイヤの生産に使用されるのに対し、「エクサメーション」では13~17インチまでのボリュームゾーンの生産に活用される。現在の彦根工場の生産能力は日産5万3000本。「バード」による生産が7000本から8000本で、残りを従来設備が担っているが、2020年にはこのうち3~4割を「エクサメーション」へ移管させる。

 「エクサメーション」の開発背景について、同社タイヤ生産システム開発担当の三枝幸夫執行役員は、「電気自動車や自動運転車など車のトレンドが大きく変わる中、タイヤに求められる性能が変わっていく。単体の品質改善や自動化ではなく、スマート工場化が求められる」と話す。

手作業に頼る部分が多い従来の成型機
手作業に頼る部分が多い従来の成型機

 従来工法では成型機1台あたり1名のオペレーターが配置され、部材のジョイント部にズレが生じていないかなどチェックする必要がある。ただ、伸縮性があるゴム素材では気温などによって条件が変わるため、人間の手による作業では限界があり、どうしても多少のバラつきが生まれてしまうケースがあった。

 一方、「エクサメーション」では熟練した技能員の“技”を機械学習させ、判断や動作を自動制御させることにより、バラつきを低減した。

 また従来はトレッド、サイド、ベルト、プライ、ビードは1つのドラムに手作業で貼り付けていたが、新型機では3つのドラムを同時使用して並行作業が可能なため生産効率が大幅に改善される。

 さらにドラムに巻き付ける際は、コンベアベルト上で部材が蛇行してしまいがちだが、新システムではカメラが監視して位置を自動でセンタリングさせ、さらに巻き付け結果もシステムが担う。これによりタイヤの性能に関わってくる真円性が高まる。

新型成型機では人手がほぼ不要に
新型成型機では人手がほぼ不要に

 「エクサメーション」と従来機を比較すると、真円性は15%向上し、生産性は2倍に引き上げられるという。その上で3分の1まで省力化を図ることが可能となった。

 新システムでは機械に何らかのトラブルがあった場合に対応するための人員はわずか1名。現在はベテランの技能員がタッチパネルでパラメーターの調整を行っており、調整内容そのものがノウハウとして蓄積されていく。

 なお「エクサメーション」で得られた情報は、既存の成型システムや前後の工程、あるいは製品情報など様々なデータに繋ぐことで、工場全体の能力向上が期待されるため、「多くのデータを収集し、より高いシステムにしていきたい」(三枝氏)としている。

三枝幸夫執行役員
三枝幸夫執行役員

 さらに今後は社外のサプライヤーともデータを共有する計画で、まずは今年3月から機械のメンテナンスを委託している外部企業との連携を始める。これにより、故障前に部品を交換できるなど設備の稼働率が一層引き上げられる。また将来的には原材料サプライヤーをはじめとしたバリューチェーン全体の改善に繋がるようなネットワーク作りを進めていく。

 ボリュームゾーン向けのタイヤは、新興国メーカーも含めて多くのプレイヤーがしのぎを削る激戦の市場。より精度が高いタイヤを作りつつ、工場全体のパフォーマンスをいかに上げていくか――「エクサメーション」は生産面で競争に打ち勝つための重要な鍵を握る。

 関連:【ブリヂストン】システムの標準化で生産効率向上へ


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