優れた整備技術者を輩出するブリヂストン長野販売

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カテゴリー: レポート, 現地

 今年9月に行われたブリヂストンタイヤジャパン主催の「生産財技能グランプリ」で、ブリヂストンタイヤ長野販売の傘下にあるタイヤセンター大橋(長野市、成澤真店長)からマイスター及び1人作業と2人作業の優勝者が選ばれた。全国にいる現役のマイスター13名のうち2名が在籍し、さらにエキスパートが2名在籍している同社。優れた整備技術はどのような理念と努力によって生まれたのか。同社の村田尚一取締役と店舗のスタッフを取材した。

作業標準の浸透と技能グランプリの意義

ブリヂストンタイヤ長野販売に在籍するマイスターとエキスパート
(左から)高附マイスター、宮川さん、成澤店長

 ブリヂストンでは作業標準のマニュアルを毎年改定しており、技能グランプリでは50を超える規定を遵守した作業が求められる。マニュアルの内容は整備だけでなく機器のメンテナンスにまで及ぶ。

 今年マイスターを取得した高附健さんと、2人作業で優勝した宮川卓也さんは、作業標準について、「当初は抵抗があったが、グランプリに参加するようになって、絶対にやらなければいけないものだと意識が変わっていった」と話す。

 さらに「安全には変えられない。誰かがしっかりやれば、周りに自然と広がり、それが当たり前になっていく」と力を込める。

 県内に17の直営店を持ち、そのうち9店が生産財を取り扱うブリヂストンタイヤ長野販売では、技術を水平展開するという目的で技能グランプリと同じ内容の整備研修を独自に行い顧客にも公開している。出場条件はなく、新人からベテランまで幅広くお互いの整備手順や技術を見ることができるという。

技能マイスターが在籍する店舗に掲示されるノボリ
技能マイスターが在籍する店舗に掲示されるノボリ

 その狙いについて村田尚一取締役は「座学も大切だが実体験をより重視している」と話す。整備のプロフェッショナルたちの作業を実際に見て、また自分の作業をチェックしてもらい、アドバイスを受けることによって、全社に高い整備技術が広がっていくという考えだ。

 高附さんは34歳。業界に入って11年になる。技能グランプリに参加して4回目の挑戦でマイスターを獲得した。

 全国大会までは土曜日に練習を重ねた。「基本である日々の作業を見直しただけではなく、大会では競技として通常作業より細かい部分まで問われるので、車両を借りて丁寧に練習した」という。

 成澤店長がマイスターである同店では、日頃から作業標準に則った作業を徹底している。そこで培われた経験を競技の中で出し切ったといえる。

 ただ、マイスターを獲得したことがゴールではない。「ますます責任を感じる。今後は各店の技術を高いレベルに上げるために、一緒に頑張っていきたい」と意欲を示す。

入庫した車両のタイヤ交換をする高附マイスター
入庫した車両のタイヤ交換をする高附マイスター

 昨年から始まった2人作業で優勝を飾った宮川さんは、15年の経験を持つベテラン。1人作業での全国大会出場経験もある。

 2人作業では途中で1人が離脱した場合の申し送りも採点対象となるが、「連絡に間違いがないよう、作業標準に加えて、独自のルールに沿って申し送りをする」といった日々の業務の中での創意工夫が、全体のレベルアップにも繋がっている。

 「今回は優勝したがタイムオーバーだったので、次は時間内に作業を収めた上で優勝を目指したい」と今後の目標を語る宮川さん。2人作業もマイスター認定の対象となるため、次回への熱意を覗かせた。

独自の作業標準でさらなる安全向上を目指す

 同社ではブリヂストンの作業標準に加えて、現場での事故を未然に防ぐため、全店統一の作業標準を導入しているという。

タイヤセンター大橋
タイヤセンター大橋

 例えば締め忘れ対策として、作業の進捗を視認できる方法がある。これはまず本締め後に、タイヤに色付きチョークで作業完了を示すラインを引く。次にトルクを締め、タイヤチョークでラインを書き込む。さらに2本のラインが引かれていることを指差し確認する。

 ここまで手間をかけることにより、作業者が離れた場合でも進捗が把握でき、締め忘れが防げる仕組みだ。この独自の確認作業はグランプリでも活かされた。

 村田部長は「実際の現場では3人ないし4人で行うことも多い。また、次々と入庫する車両に対応しながら並行して作業を行うケースもあるため、正確で確実な申し送りが必要になってくる」と導入の背景を説明する。

 また作業指示書にも標準を設け、記入項目の徹底を行った。「複数人で確認を徹底することによって、お客さまと作業者双方の安全が守られる」(村田取締役)。

 当たり前のことを当たり前に――。同社では今後も一層の技術力向上を目指しつつ、その高いレベルを全店舗で広げていくことで顧客の安全運行に貢献していく。


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