「自らの業界を良くするのは自分たち」協和タイヤ商会

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カテゴリー: ディーラー, レポート

 神奈川県横浜市金沢区にある有限会社協和タイヤ商会。1981年の設立以来、地域に密着した会社運営を徹底してきた。今年5月に2代目の社長となった山口智之さんは持ち前の明るさと行動力で自分の業界、自分の地域を盛り上げる活動に日々邁進する。「頼まれたから仕方なく」といった“やらされている感” は微塵も感じられない。その源にあるものは「恩返し」の気持ちだ。

協和タイヤ商会の山口社長
協和タイヤ商会の山口智之社長

 「その人に必要とされるのであれば、責任感も出てくるし、自分の存在意義もある。続けることの良さはそういうことなのかもしれない」――仕事に対する考えをこのように語る山口さん。

 今年4月に協和タイヤ商会の創業者であり父でもある先代の社長、敏郎氏を病気で亡くした。

 その時を振り返って「進退を考えたこともあった」と話す。ずっとその背中を見続け、時にぶつかることもあったが、「何だかんだ最後のところは頼りにしていた。分からないことは答えてくれる、それが当たり前になっていた。父がいなくなった穴は大きい」

 それでも会社を継いでいくことを決めたのは、敏郎氏が残してくれた顧客や仕事への情熱だ。「お客さんが困らないように台風が来ようが店を開ける人だった。支えてくれる方々がいるから、うちの会社がある。だからこそ継続して恩に報いると社員の皆で決めた」

 正式には5月に40歳の若さで社長に就任した。「不安な部分も少なくない」と話すが、「それでもやっていく意義がある」と強い決意を示す。

いつかタイヤ組合にも恩返しを

 山口さんのことを知る、あるタイヤ販売店の社長は、「社交的で周りを引き付けるパワーのある人。とにかく頑張っている」と評する。

 以前からタイヤ専業店の業界団体である神奈川県タイヤ商工協同組合、あるいは地域振興を目的とした地元団体の活動にも精力的に参加してきた。昨年は神奈川県中小企業青年中央会の会長に選出され、ますます多忙な毎日になりそうだが、その原動力はどこにあるのか。

 「組合や地域のことを一生懸命やっているうちに、同業でも異業種でも他の会社から刺激を受ける。これは自分の会社の中だけにいたらできないこと」

協和タイヤ商会
店舗は横浜市の最南端に位置する金沢区の工業団地内にある。ヨコハマの生産財タイヤをメインに、乗用車用の中古タイヤの販売も行う

 こうした交流を通じて培われた人脈はビジネスにも結びつき、会合で知り合った企業関係者が自身の顧客になるケースもある。ただ、活動の目的は自身の会社さえ良ければという欲ではない。

 「お客さんが身近な存在になり、あたかも身内のクルマのタイヤ交換をしているような感覚になることもある。言い換えれば、自分の大切な家族や仲間が不利益にならないためにはどうすればいいのか、これまで以上に真剣に考えるようになった」

 「色々な人に出会ってパワーを与えてもらう。そうした関係をもっと作っていきたい」――常に前を見据えて今後を話す。一方で、そうした中にあっても、「最優先すべきはタイヤ組合」と力を込める。

 自身が社外の活動に関わるきっかけは、敏郎氏からバトンタッチして参加するようになった神奈川県タイヤ商工協同組合の存在があるからだ。

 「今でも覚えているが、最初に組合の皆さんが気にかけてくれたのが大きい。以前は人前で話すのも苦手だったが、参加することが楽しくなった。そういう場に慣れていくことで、話し合う内容も自然と意味が分かるようになっていった」

 山口さんは組合に加盟して活動すること、そのものが自身のメリットになると考えている。

 「自分たちの業界に対して何らかの行動できる。自治体との災害協定や空気充てん講習など、自分たちの業界をより良くしていくことはその業界にいる人にとっては当然のこと。いかに自分がその業界のためにできるか――それを自分たちで作り上げていける。こんなに有意義なことはない」

 組織の活動について話を聞く中で、「いつかはタイヤ組合に恩返しを」――この言葉が繰り返し登場する。

 「将来、自らが得た経験やノウハウをタイヤ組合にフィードバックしたい。正しい判断ができる人間になれるよう自分を育てることも必要だし、組合に役立つ人間になることがフィードバックかもしれない」

 仕事に関しては「社長になって大変なのはこれからかもしれない」と苦笑いする。それでもタイヤを販売するだけではなく、それ以外に何か返せないか、できることはないかを模索する。「これを苦しいと思うか、楽しいと思えるか」――。

 「個人でお返しできることはたかが知れている」。だが、一人の行動が将来の大きな一歩に繋がるかもしれない。根底にある恩返しの気持ちは、周りの人々に確実に伝わっている。


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