次世代に向けて生き残りをかける 変革者たちの挑戦

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カテゴリー: レポート, 現地

 労働力人口の減少や社会問題にもなった長時間労働を背景に、働く環境の変化が求められている。大手企業を中心にワークライフバランスの実現に向けた議論が活発化しているものの、中小では「経営に余裕がない」という声も少なくない。こうした中でも時代の潮流から取り残されないために、そして次の世代に向けてチャレンジを続ける企業がある。自らができることを模索して、挑戦する輸送事業者やタイヤ販売店の取り組みを取材した。

課題解決に向けた実行力を

 人手不足が叫ばれて久しい輸送業界。数年前からその傾向は加速してきている。ただ、ドライバーの数そのものに大きな変化は見られず、ここ数年は横ばいで推移しており、輸送量は漸減しているという統計もある。

 それでは、なぜ人手が足りないのか――。日本ミシュランタイヤで生産財タイヤ事業を担当する高橋敬明執行役員は、「輸送効率の悪化が人手不足感を加速させているのではないか」と指摘する。ドライバーの拘束時間管理の厳格化、あるいは個人向けでは即日配達といったサービスを背景に、一人ひとりの負担が重くなっていることが要因の一つとなっている。

若林運送の若林権太郎社長

 一方、厳しい状況にあっても従業員が働きやすい環境づくりを積極的に進め、事業の継続的な発展に繋げようという動きは広がっている。

 東京・江戸川区にある若林運送は今まさにドライバーの待遇改善に取り組んでいるさなかだ。若林権太郎社長は自身が入社した1999年当時を振り返り、「不景気で給料を下げないとやっていけず、従業員は次々に辞めていった」と話す。その後、2007年に社長を継いだ後もリーマンショックや東日本大震災など苦境は続き、「当社の存在価値はどこにあるのか、ずっと悩んでいた」という。

 こうした状況から抜け出す兆しが出てきたのは2年ほど前だ。歩合給を廃止し、ドライバーの能力で基本給を決める仕組みに切り替えた。さらに顧客と交渉し、前日夜に出発する便の一部を当日朝にスライドするといった労働時間の削減も推し進めた。

 その結果、従業員のモチベーション向上に繋がり離職率が低下するなど、一定の成果を挙げたという。実際、外部に委託した従業員の満足度調査では、以前は給料面での不満が多く出されていたが、1年後には全ての項目で改善が見られた。

 若林社長は「まだ待遇を改善する必要はある」と話す。ただ、単なる値上げに頼るのではなく付加価値のあるサービスを提供することで目標を達成していく考えだ。

ハヤマ運輸の葉山晋一社長

 一方、タイヤ販売店でも先進的な考えでビジネスに取り組む企業が現れてきている。

 東京・荒川区に本社を構える板野商会の板野光博社長は、勤怠を正確に管理できる仕組みを整えた。古い体質が残る業界の中にあって、労働時間を曖昧にしない企業風土を作り上げた。

 「業界に対して不満もある」と話す板野社長は、培ってきた知見を外部に伝播する労を厭わない。そこには相当の覚悟も必要なのかもしれない。だが、「行動しないと何も始まらない」という意志を持ち続け、今後も変革を進める。

 環境づくりを実現するのは、待遇改善といったソフト面だけに限った話ではない。名古屋港を臨む工業地帯から全国の倉庫や食品センターへ食品を輸送しているハヤマ運輸(愛知県飛島村)は、IT設備の導入が一つの切り札となった。

 同社の場合、小口配送がメインで以前は注文書などFAXの数が膨大だった。その煩雑な業務を解消したのは、「全てをパソコン上で完結できる」(葉山晋一社長)という独自のシステムだ。顧客からの問い合わせにも迅速に対応でき、ドライバーや事務スタッフをはじめ、様々な部門で負担軽減に繋げた。

 社内ではプロジェクトチームを構成し、従業員からの意見を採り入れる活動も継続している。葉山社長は「働きやすい会社を作り、その結果として利益が付いてくる」と力を込める。

 明確な労働時間や給与体系、従業員の負担を軽減するための取り組み。これらの会社に共通しているのは、「将来も従業員がやりがいを持って働けるようにしたい」というトップの意思と実行力だ。困難へ挑戦するための想いが従業員にも伝わり、好循環を生んでいるように見える。

 環境がめまぐるしく変わる中、諦めてしまうのか、それとも課題に対して走り出すのか――最初の一歩が将来、業界をリードするような変革に繋がっていくのかもしれない。


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