【東洋ゴム】基本性能高めたエアレスタイヤ「noair」

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カテゴリー: レポート, 試乗

 東洋ゴム工業は9月8日、大阪・吹田市内で、近未来型エアレスコンセプトタイヤ「noair」(ノアイア)を発表。報道関係者向けに実車装着試走会を開催し、その実力を初めて披露した。

斬新な「X字型スポーク」で性能を向上

 タイヤの基本的な機能は次の4つ。①自動車の重量を支える「荷重性能」②駆動力・制動力を路面に伝える「駆動・制動性能」③路面からの衝撃を和らげる「乗り心地性能」④クルマの方向を転換・維持する「操縦性能・安定性能」――。

noair試乗会
「X字型スポーク」

 タイヤに規定の空気圧が充てんされていなければ、これらの性能をフルに発揮することはできない。言い換えると、タイヤの機能を発揮させるためには、タイヤに空気を充てんしその空気圧を常に規定値に維持しなければならず、空気圧管理は不可欠だ。

 だが、タイヤはゴムの性質上、空気が自然に抜けることは避けられない。また空気が充てんされている以上、タイヤは様々な外的要因によりパンクやバーストの危険と常に隣合わせに置かれているとも言える。

 このような宿命的な課題に対し、多くのタイヤメーカーは近年、その解決に向け積極的な取り組みをみせる。空気充てんを必要としないタイヤ、「エアレスタイヤ」の開発もその解の一つだ。

 東洋ゴムでも2006年からエアレスタイヤの実用化・商品化について、「議論と研究を重ねてきた」(技術第一本部の守屋学本部長)という。

 空気を充てんすることによって果たされているタイヤの機能をすべて、空気に頼らず担保し、当たり前のようにクルマを安全に快適に走行させる――このテーマの実現に向け、同社では研究開発に取り組んできた。

noair試乗会
「noair」

 エアレスタイヤはその構造上、もっとも重要な役割を果たすのがスポーク。第1世代から第3世代(06年~)までの知見を基に第4世代(07年~)として「Y型スポーク」を開発。第5世代(09年~)はさらに「楕円形スポーク」に変更した。今回開発の第6世代は、旧世代からの技術をブレークスルーし構造を一新したのが最大ポイントだ。

 特殊樹脂製のスポークをタイヤ幅の奥側と手前側とで交互に交差させ連続させる、独自の「X字型」を採用。耐久力を大幅に向上した。同時に、スポークの本数を過去のモデルから倍増の100ピッチとすることで、接地圧を分散し打撃音を大幅に低減した。

 またトレッドゴムと外径リングの間に、カーボン繊維強化プラスチックによる補強層を配することでスポークへの荷重を低減した。

 守屋本部長は「近い将来、EVやコンパクトカーなどの未来型モビリティが市場の一画を占めると想定した場合、エアレスタイヤのようなメンテナンスフリーのニーズが高まる。またパンク故障のない移動車両の有効性も高まる」とする。

 その上で「現時点の技術レベルを公開することで、多方面から様々な知見を獲得し、更なるイノベーションに取り組む。モビリティ社会に役立つタイヤの開発を追求していきたい」と展望を語った。

空気入りタイヤに大きく近付く

noair試乗会
空気入りタイヤに近づいた「noair」

 エアレスコンセプトタイヤ「noair」、その試乗の舞台は万博記念公園。パイロンで特設コースをしつらえた。

 「noair」を装着した車両はスズキ・アルト。代表的なKカーである。また、参考としてFOMM(神奈川県、鶴巻日出夫CEO)が開発したEV「FOMMコンセプトOne」も用意された。

 空気充てんを不要とするタイヤとは、どのようなものなのか。「乗り心地が硬いのでは」「前後・左右・斜め、様々な角度からの入力に対応できるのか」「大きな荷重移動に耐え得るのか」――空気が充てんされていないことから、エアレスタイヤにはこれらのような先入観を抱いてしまうのではないだろうか。

 特設コースを実際に走行したところ、そういう先入観はすべて覆された。アルト、FOMMコンセプトOneともに、コースを時速30キロ程度で走行する。スタートからの加速はスムースで、コーナーではグッと踏ん張る。揺れの収束も想像以上にスムースで早い。

 直線路を時速35kmでフルロックブレーキをかける。タイヤは滑ることなく、しっかりとグリップし停止した。

 「走る・曲がる・止まる」というタイヤの基本性能を、「noair」は一般的な空気入りタイヤと遜色ないレベルで発揮した。今回の特設コースでは速度に制限があり、低速域での評価に限定されたが、同社のタイヤテストコースで時速120kmという高速走行にも対応したそうだ。

 「noair」の走行性能は市販の空気入りタイヤのレベルにかなり近付いたと言える。だが、気になる点もある。それは音と乗り心地だ。クッション性は空気入りタイヤにまだ及ばない。路面から発生するゴロゴロという音も車内に響く。

 開発陣によると、「乗り心地やNVHは、耐久力と背反する性能。それを両立する技術が第6世代に採用した『X字型スポーク』だ。車外騒音は過去モデルから飛躍的に改善したものの、課題として残る」とする。

 その一方で、「エアレスタイヤの場合、空気入りタイヤに比べて、トレッドゴムやパターンより、スポークのほうがタイヤ性能への寄与率が大きい。今回の『X字型スポーク』は高いコーナリングパワーを発生するので、クイックなハンドリングを実現し、路面への追従性が高い」と、その性能に強い自信をみせる。

 タイヤ単体でなく、車両メーカーなどと共同開発することで、エアレスタイヤは実用化・商品化への期待が一気に膨らむ。特にFOMMのように、斬新な発想を具現化する開発思想を持つ企業とコラボし開発ターゲットを絞り込むと、開発速度はさらに上がるに違いない。今後の展開に注目したい。


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