女性ならではの“おもてなし”を タイヤガーデン 富士I.C.

シェア:
カテゴリー: ディーラー, レポート

 静岡県内でタイヤショップ4店を展開するホリイ(販売本部・富士市日乃出町5番地、堀井直社長)。市場が成熟し経済環境が厳しさを増す中、堅調な推移をみせ着実に地歩を固めている。その要諦とはなにか。タイヤガーデン富士I.Cからレポートする。

接客と整備、それぞれの業務を分業化

 ホリイは1947年に創業した老舗のタイヤショップ。タイヤガーデン富士I.C.のほかに、タイヤガーデンHorii(伊豆市)、GRAND SLAM富士(富士市伝法)、Pace Maker(駿東郡清水町)を展開している。

 同社が注目を集める大きな理由に、女性スタッフを積極的に採用し社員として定着させていることが挙げられる。しかも、その取り組みは決してここ数年のことではなく、「20年以上も前から」(堀井社長)という。

 自動車整備業界では現在、人材不足の苦境に立たされている。これまで中高年層の男性にその労働力を依存し続けてきた結果、スタッフの高齢化が進展していること。少子化やクルマ離れにより若者層を取り込めないこと。これらの要因が複層的に絡み、事態を加速化させた。

タイヤガーデン富士I.C
タイヤガーデン富士I.C

 この問題の解決策として、スポットが当てられたのが潜在的労働力である女性スタッフの就労促進である。ただ、自動車整備業の女性労働者割合は極端に少ない。

 しかし、堀井社長は「このままスタッフが男性だけだと、いずれ限界が来るに違いない。近い将来、女性スタッフが絶対に必要になる」――そんなインスピレーションを感じたそうだ。女性スタッフの力が販売力向上に繋がると確信した堀井社長は、女性のリクルートに力を入れる。そして、その読み通りだった。

 「ただ」と、堀井社長は次のように続ける。「女性は男性の代わりではない。そこを勘違いして、女性に男性と同じ仕事を求めるケースが多々見られる。我々の仕事では力が必要な作業がある。だが、それは男性が担当すれば良い。女性に向いている仕事というのもあるのだから、そこ力を発揮してもらえれば良い。接客と作業、きちんと分業することが第一前提だ」。

 実際に現場の最前線に立つ、2人の女性スタッフに“証言”してもらおう。

 販売本部販売促進リーダーの黒川奈美さんはホリイに入社して22年。タイヤガーデン富士I.C.のマネージャーを務める水口綾さんは入社5年目。入社の動機は、ふたりとも特にタイヤに強い思い入れがあってのものではなかったそうだ。しかし、入社してみてタイヤが実に奥の深い商品であることが分かる。同時に、接客することの難しさ、楽しさを知った。

 『タイヤは技術的な専門用語があり、言葉で説明することが難しいが、接客する上で大変ではないか』――このように訊いてみた。すると、黒川さんは次のように言う。

 「確かにそう。一つの商品について勉強して、色々なことを覚えても、次から次へと新商品が出てきますし、クルマへの装着の段階で、ピットスタッフでないと的確にお答えすることができないような質問を受けることもあります。そういう時は知ったかぶりしないで、ピットスタッフに訊きに行き、要点を教えてもらってからお答えする。次、分からなければ、また訊きに行き、教えてもらってお答えする。それを何回も繰り返すこともあります。

 もしかしたらピットスタッフとお客様が直接、お話をしたほうが早いのかもしれません。ですが、接客をすることに関しては私たちにお任せ頂いていますので、ピットスタッフの言葉を噛み砕いてお伝えし、お客様が納得されるまで丁寧にお答えすることを心がけています」

タイヤガーデン富士I.C
水口綾さん(左)と黒川奈美さん(右)

 それは水口さんも同様。「接客の仕事は大変ですが、仕事を通じて得られる喜びや楽しさはそれ以上。どうしたらお客様に喜んで頂けるのか。私たちはどのような心配りができるのか。そこを常に意識しています。専門用語を多く使ってご説明するより、時には擬音も交えた、分かりやすい言葉のほうが親しみやすく、ご納得いただけるようにも思っています。

 自分たちも一般の販売店に行ったときに、一所懸命応対してくれる店員さん、親身になって考えてくれる店員さんから買いたいと思います。ですので、私も『ここに来たら水口から買いたい』と思って頂けるよう、お客様の心を開きたいですね」

 女性スタッフが販売の最前線に立つことで、大きく変化したのが客層。女性の来店客が着実に増え続けているのだ。水口さんは「私たち女性スタッフの姿が外から見えることで、店内に入りやすいと感じて頂いているようです」と、手応えを得ている。

 女性ドライバーの比率が高まっている状況を考えると、その女性客をいかに自店に引き入れるかが成長の鍵。その点でも重要な役割を担っている。

 黒川さんは、自身が行っている接客こそが競合する他店との差別化だという。その上で接客の理想を「旅館の女将さん」と表現する。顧客への“おもてなし”が、女将と共通するというのだ。

 「例えばお客様から『この料理の素材はどの産地か』と訊かれたら、板長に確認しお答えをする。本当は板長がお答えするほうが的確なのかもしれませんが、板長は職人気質でお客様への言葉遣いができないかもしれない。そういう場面ではやはり女将が柔らかい物腰でていねいにお答えするほうが、お客様の心をつかむことができると思います」

 『今後、目指す方向は、1日の来店を数名に限定する超高級鮨店ではなく、家族や友だち同士でも気楽に食べに入ることができるファミリーレストランのほうですね』――このように訊ねたところ、二人とも「そうそう」と、強く同調してくれた。「スタッフと気さくにコミュニケーションがとれるようなレストランになりたいですね」と、言い添えて。


[PR]

[PR]

【関連記事】